HARVEST

森の国 Valleyの営み
土のもの

「森を食べる野生ランチコース」森の国の5日間の食材探しの旅

全国を旅する出張料理人であり次の世代を生き抜く若手料理人が集まるChef’s Roomとコラボレーションした3日間限定のランチコース。森の食材を探し魅力を発見していく5日間の旅を経て、愛媛県松野町「森の国」の大自然を探求してきました。10月7日〜9日は、3日間限定で森の国の食材を前面に出し海、山をテーマにした「森を食べる野生コース」を2種類ご用意しています。お皿の上の一つ一つの食材にはそれぞれ壮大なるストーリーがあります。料理人たちが実際に足で歩いて仕入れた食材をご紹介します。

廃校小学校で採集した金木犀の花

食材探しの旅1日目は目黒の町を歩いてみた。
すると金木犀(キンモクセイ)の花の香りがどこからか漂ってくる。
「あれ?近くに金木犀(キンモクセイ)ある?」
と周りを見回す。
「あ!あった!」
花がつぶれないように丁寧にみんなで一つ一つ摘んでいく。

一つ一つ花を摘む作業は地道

▶︎金木犀は香りをソースに閉じ込め「山」の前菜で登場。

ガルグイユ 金木犀のエッセンス

秘密の隠し山に自生する早松茸(サマツタケ)

「みんなには教えられないけどね、隠し山があるんよ」
目黒でいつもお世話になっているたみこさんとシゲさん。
お床下の倉庫には籾殻の中に芋を貯蔵したり、数十年ものの梅干しや漬物などの保存食を保管しながら、米や野菜、原木椎茸などを育てる2人は旬の食材には敏感だ。
今年は開くのが少しだけ遅かったと言う早松茸。
「もうね、毎日食べ飽きたからもっていき〜」と言って採れたての早松茸を袋いっぱいにくれた。

袋を開けた瞬間ふわっと松茸の香りが漂う

▶︎「山」のパスタソースの隠し味に。

猪のラグー ローズマリーのパッパルデッレ

投げ銭スタイル?!?津島のヒオウギ貝

2日目早朝。滑床渓谷から1時間ほど車を走らせてやってきたのは、宇和島の津島。
真珠のアコヤ貝の養殖で有名な愛南町の隣にある町。
海沿いには養殖をしている漁船が並ぶ。
今回、海コースの前菜「ヒオウギ貝とタイチロウくんの瞬間燻製タルタル」でご用意したヒオウギ貝はここで40年以上貝の養殖をやっている有田さんから頂いたもの。

細い路地を入っていくと入っていくと看板が。
一年ではまだ小ぶり。2年経つと大きな貝になる。

▶︎バルサミコ酢につけたヒオウギ貝の貝柱は「海」の前菜に。

サステナブル養殖真鯛の鯛一郎クン

2日目の午後に訪問した先は、宇和島で養殖鯛を引き継いで2代目の徳弘多一郎さん。
笑顔で迎えてくれた彼は鯛一郎クンにどんな餌を与え、会社としてどんなことを大切にしているのかを丁寧に説明してくれた。
技術で美味しさを追求し続ける彼の熱意と確固たる信念には圧倒される。
毎日声をかけながら、愛情込めて育てた鯛一郎クンの味は本物だ。

「愛しているよー」と叫びながら餌をやる

▶︎瞬間燻製した鯛一郎くんは、「海」の前菜のタルタルの中に。

津島ヒオウギ貝と鯛一郎クンの瞬間燻製タルタル

MORI(森/毛利)ファームの無農薬ハーブと梅と藁

いつもSELVAGGIOでお世話になっている毛利伸彦さん。
自然農法で野菜やハーブ、梅、米を作っている。
無邪気に自然と対話するように話す伸彦さんと、包み込むような優しさで出迎えてくれる奥さんのまゆみさんに会うといつもなぜかほっこりする。
まゆみさんが庭で育てているローズマリーやタイム、セージ、レモングラスなどの無農薬ハーブもたくさんいただいた。

自然農法で作った米の藁をいただきました

▶︎ローズマリーは「山」のパスタ麺に練り込み、セージ、タイムはラグーソースに使用。タイムは「海」のパスタのビスク(地海老)ソースにも使用している。
▶︎藁で「山」のメイン、合鴨・赤牛を燻す。

目黒の田んぼで雛から育てた合鴨(アイガモ)ちゃん

江戸時代から、米作りはこの町(松野町目黒)の生業として盛んだった。
滑床渓谷から流れる清水でお米をつくれるのは、上流域にある目黒地区だけの特権だ。
昨年から米農家となった細羽さんは、無農薬にこだわり、今年は合鴨農法で自然栽培米に挑戦。
毎日家の隣の田んぼ作業をしながら米と共に大きくなる合鴨にはいつの間にか深い愛着が芽生えていた。
雛の頃から大事に育てた大切な合鴨を、地元のベテラン猟師である影平さんと木下さんたちに締めてもらう。命というものに向き合いながら、料理人たちがまだ温かい合鴨を抱きながら自身の手で大切に毛をむしり、捌く。

@森とパンの横

▶︎合鴨は「山」メイン、シンプルに合鴨のローストでご提供。

滑床渓谷の水で育てられた虹鱒(ニジマス)

滑床渓谷と目黒集落の間に、「あまごのつりぼり」の看板が現れる。
ここはアマゴやニジマスの養魚場だ。
3年ほど前から管理をし、毎日水替えや餌やりなど魚たちの飼育をしているのは竹内さん。
台風の日も水路が滞らないように山の中に水路を掃除しに出なければいけないという。
慣れた手つきで魚を捕まえ、目の前で捌く姿は格好良い職人だった。

色鮮やかなニジマス。卵からここで孵り、竹内さんがここで育てる
滑床渓谷の養魚場を管理する竹内さんは目黒区長でもある

▶︎ニジマスは「海」のメイン。低音調理をしたのちに、薪でジュッと仕上げる。

ニジマスのミキュイ 極早生みかんのブールブラン

目黒での栗拾いとSELVAGGIO農園

5日目の朝は早起きしてあざみの芝さんのところで栗拾い。
目黒では栗を育てている農家さんも多い。
栗をSELVAGGIOとChefs Roomのみんなで拾っていく。

慣れた手つきで栗を拾うSELVAGGIOのスタッフ
紫蘇の香りが詰まった穂紫蘇

▶︎栗は、「山」デザート、栗モンブラン、渋皮の甘露煮に仕上げた。
▶︎SELVAGGIO農園の穂紫蘇は「海」前菜に。オレガノは「海」ピッツァに入る。

松野町産和栗のモンブラン

料理人のご紹介

Chef’s Room(シェフズルーム)
出張料理斡旋サイトやオンラインサロン、レストランコーチングなど飲食に関わる事業を手がける。「新しい飲食業を創造する」をミッションに、次の世代を生き抜く料理人を養成し、飲食業界の新しい働き方を提唱。
Chef’s room公式サイト:https://chefsroom.jp/home/
メンバー:
竹矢匠吾(たけやしょうご)「山」前菜担当
沖元皓椰(おきもとこうや)「山」「海」パスタ担当
福崎義範(ふくざきよしのり)「山」「海」メイン担当
高柳絵音(たかやなぎかいね)「海」ドルチェ担当

SELVAGGIO(セルバッジオ)
ナポリピッツァの世界大会などで数々の受賞歴を誇る東京都練馬区石神井にある「PIZZERIA GTALIA DA FILIPPO(ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ)」のオーナーシェフ岩澤 正和氏がフード監修。地元生産者や住民と関係を築きながら四国、瀬戸内の食材の豊かさを感じられるメニューを提供している。
SELVAGGIO公式サイト:https://morino-kuni.com/riverside-lodge/food/
メンバー:
北久裕大(きたくゆうだい)「海」前菜担当
佐々木海(ささきうみ)「山」「海」ピッツァ担当
湯川碧(ゆかわみどり)「山」ドルチェ担当



今回実際足を運ぶことができなかったつながりのある生産者さんもたくさんいます。
大地と太陽と向き合う愛媛県の大自然の恵みをお楽しみいただけるコースメニューを提供しました。

ランチは3日間とも大盛況で終わりました。
Chef’s Roomとのコラボイベントは今後も四季を通して定期的に開催予定です。
第3回も企画予定ですので、どうぞお楽しみに。

ライター・撮影 井上美羽