RESIDENTS

森の国 Valleyの住人

No.31
村まるごとあそび場計画

狩猟家
2023年春、兵庫県尼崎市から愛媛県森の国に、突如移住した若い家族がいた。坪井家だ。一家大黒柱の坪井映二郎(呼称ワッホー)は、大学を中退して自衛隊に入隊。病気にかかった両親の介護と、叔父の会社の後継ぎになるために自衛隊を退役するが半年でクビになり、路頭に迷っていた中で旧友に進められ不動産の営業職に転職。たった1年でトップセールスマンの座を勝ち取り、4年連続で表彰という異色の経歴を持つ男だ。

そんな奇想天外な人生を逆手に楽しみながら生きる彼が次に目をつけたのは愛媛県松野町の限界集落「目黒」(通称森の国)だった。移住の決断は直感だったが、その直感は間違っていなかったと振り返る。

人のために生きる

小さい頃から「おもろいこと」が大好きだったというワッホーは、小学生の頃からエネルギッシュだった。放課後と昼休みの遊びを考えてクラスみんなで遊ぶ「遊び係」を6年間務めたり、生徒会長に推薦されたり、合唱コンクールや体育祭、文化祭などの祭りごとはいつも中心となって周りを巻き込んでいた。

「どの場所にいてもリーダーキャラなんです。楽しむのが上手いともよく言われます。自衛隊のしんどい訓練も何か少し遊び心を加えてふざけて人を笑わせたり。おもろくさせるのがとにかく好きです」

こどもの頃からやんちゃな少年心を持ち続けている彼だが、人のために生きるという強い信念を持つ。

「高校時代のラグビーが、自分の人生の中で大きな影響を与えたターニングポイントかな。人のために頑張ることに美学を持ったときがあって。ラグビーをやりながら、お金や自分のためじゃなくて、仲間のために体を張ることがかっこいいって思うようになったんです」

社会人になり自衛隊に入隊しこの信念はさらに磨かれた。自衛隊退役後、不動産会社の営業職に転職した彼は、仕事のための勉強や営業をする中で、これまで直感で進んできた道が論理や成果で裏付けられ、正しかったのだと改めて気づく。

「営業は情報と話術が武器になる仕事です。人生で初めてちゃんと勉強しました。経済のこと、社会のこと、不動産のこと。そして「営業とは何か」ということを5年間肌で学びました。結局は、愛というか、自分の私利私欲ではなく、どれだけ相手に喜んでもらえるかを考えることが相手も自分も一番幸せなんだという答えにいきつきました」

力強く語る彼からは、自分の経験から裏付けられた根拠が伝わってくる。

「今までラグビーや自衛隊で何となくかっこいいやろって思ってた考え方が、営業を通じて意外と合ってたんや、って腑に落ちたんです。やってたことは間違いないし、営業ではそれが単純にお金や数字としてはかれる業界やった。結果がついてきてくれたおかげで、愛とか言ってても売れないですよって言われても、誰に何を言われようが俺より売れてへんしって、蹴飛ばせるくらいの自信がつきました笑」

あそび場を自分で作ったほうが早い

お金には何不自由なく、順風満帆の人生を歩んでいたワッホーは、購入した新築マンションと、天職であった営業を全て捨て、ある日突然、限界集落である目黒に移住を決めた。それはどこまでも「おもろい」を追求し続ける男ならではの決断だった。

「年収1300万の仕事を手放すなんて・・・と思うんですけど、なんかやっぱし田舎の方が、おもろそうやしっていうのと、逆にこんくらいの思い切った決断できんかったらこの先もう大きくなれへんと思って」

「仕事も生活も安定してゆとりができたときに、今お金のために働いてるけど、何かもっと自分の好きなこと、自分の楽しみ、まわりもそれで楽しませることをやりたいなと思ったんです。あと、妻や自分の息子をみていて、こどもたちの遊び場がどんどんなくなっていってるのもすごい嫌やった。自分が幼少期に遊んでた芦屋の山や川ももう立ち入り禁止。遊ぶ場所がほんまにないなって思う。キャンプ場やのに焚き火禁止とか。それやったらもう作った方が早いなと。あそび場を」

全ては食から

ある日友人と魚のモリ突きに行き、初めて生きた魚を手にした時、どうすればいいかわからなくなったというワッホーは、毎日口にしている食のルーツを知らない自分自身に衝撃を受けたと言う。そこから食の本を読み漁る日々。これまで仕事では世界経済や社会問題についての話をしていたが、それらの問題が食と繋がる瞬間があった。

「全ては食から来てるんだ、と腑に落ちた時、自分が口にしていたものが怖くなって、食べられなくなったんです」

それまで大阪の中心地エリアで毎日外食。帰宅後は夜中にフライドポテトを食べ、こどもにも抵抗なくスナックをあげていた生活だった。

「俺はこんなことをするために仕事を頑張ってたのか。消費するためだけの、ほんまにどうでもいいことに使っているなと気づいたんです」

そこから食生活を一新。化学調味料もなるべく避け、一時はスーパーで売っている白米も食べていいのかわからなくなった。危機感を感じ自然農法や食にまつわる環境問題について深く調べるようになった時、森の国に出逢った。

「情報収集の一環でたまたま森の国の野外教育のサイトを見つけました。興味を持ってアポをとり、実際に目黒にきた時に、俺らが考えていたこと全部やってるやん、と思って」

「『田舎だから本当何でもできるんです』という細羽さんの説明を受けながら目黒をめぐっていて、この人遊び上手やなと思いました。面白い大人ってまだおったんやって」

遊びと事業を上手にブレンドしている森の国Valleyの取り組みに心から共感し、ここで「遊びながら本気で生きる」ことを学ぶため、移住を決めた。将来は彼自身が森の国のような「あそび村」を4拠点作ることがゴールなんだと意気込む。

坪井映二郎の夢は壮大だ。まずは最初のステップとして彼が注目したのは「ママとこどものあそび場をつくること」だった。

執筆・編集・写真 / 井上美羽

坪井映二郎が企画中の「ままとこキャンプ」が2024年春、参加者募集中!
▼イベント詳細・お申し込みについてはこちらから▼
https://morino-kuni.com/challenge/5807

RESIDENTS一覧はこちら