RESIDENTS

森の国 Valleyの住人

No.17
古民家改装女子

目黒住民
2021年夏。森の国目黒に突然やってきた女の子がいる。茨城出身の高橋和佳奈(21)さんだ。
大学を休学し、今ある場所をどういう場所にしていくかという "場づくり" に興味を持っていた彼女は、全国各地を巡りながら、縁もゆかりもなかった愛媛県松野町に突如やってきた。

2021年夏。森の国目黒に突然やってきた女の子がいる。茨城出身の高橋和佳奈(21)さんだ。
大学を休学し、今ある場所をどういう場所にしていくかという “場づくり” に興味を持っていた彼女は、全国各地を巡りながら、縁もゆかりもなかった愛媛県松野町に突如やってきた。

繋がりも、住む家もない中、持ち前のコミュニケーション能力で、わずか1ヶ月で目黒の町に溶け込み、今や彼女の周りには常に人が集まる場に。

今回は地元みんなに愛される和佳奈ちゃんのインタビューを行った。

茨城県出身、大学3年生(休学中)の高橋和佳奈さん

空き家物件探しとリノベーション

大学休学中の2022年3月までという期限付きで森の国目黒に住むことになった彼女は、まず家探しから始まった。地元の人たちから空き家情報を聞きながら、物件巡り。空き家は多いものの、外からやってきた見ず知らずの女の子に貸せる物件は少ない。

そんな中、見晴らしの良い一軒の平家を借りられることに。

大阪の友達まなみちゃん(21)を誘って古民家暮らし&リノベーションを始めた

しかしその家は誰もが口を揃えて「人は住めない」と言われていた取り壊し寸前の古民家だった。前の住人の衣類やモノがそのまま残っていたため、住み始めて最初の1週間は朝から晩まで片付けの日々。「古民家のリノベーションやDIYをやりたいと思っていたけど、まさか片付け掃除から始まるとは思っていなかった(笑)」と和佳奈ちゃんは話す。

「最初はトイレもないし、お風呂もお湯出ないし、ガスは通っていない・・・自分はそんなレベルの家に住むのかと思って驚きました(笑)」

玄関は自分で漆喰を塗って・・・
障子を張り替え、人工芝を敷き、囲炉裏を手作り、ここまで素敵な玄関に!

情熱の矛先を探して

なぜ、彼女はこの町にやってきたのだろうか。それは、「情熱の矛先を探していた」のだと話す。パンデミックの影響で予定していた世界一周旅も中止となる中、自分のやりたいことが見つからず悩んでいた2021年4月。

「周りの友達は、自分のお店を出したり、やりたいことに打ち込んでいたりして、キラキラしていたんですよね。そんなアクティブな同年代を見ていると、自分だけ取り残されているような気がしていて。自分も何かやりたいけど何をやりたいのかもわからない。自分探し真っ只中に、ご縁で森の国に連れてきてもらい、山や川、森に囲まれた大自然の環境の中で過ごし、人に会って話す中で、『焦んなくていい。好きなように動いていたら何か見つかる』と思えたんですよね」

1週間滞在を終え、一度森の国を離れた彼女は、その間もこの町に戻りたいと思っていたという。

「何かしらの形で『森の国』と関われればいいなあ、とは思っていたけど、自分がここできることがあるのかどうかも、何ができるのかもわからなくて。ただ、とりあえず暮らしてみて、できることを探索しよう、と。」

「新しい人と出会える場所」を

ただ、“森の国で暮らす”だけの田舎暮らしがスタート。人口270人の限界集落である目黒では、大学生の女の子が空き家を借りて住み始めたという噂はあっという間に広がり、住み始めてから2ヶ月で、町の注目の的に。

町の人がご飯をお裾分けしてくれたり、家の中で眠っていた家具を持ってきてくれたり、徐々に彼女の家に人が集まるようになり、いつの間にか、彼女がもともとやりたかった“場づくり”になっていた。

「最初は大阪から友達も来てくれていたので、2人でこの家を造りながら貧乏生活をしていると、憐れむ目でみんな来てくれるんです。でも結果的にそのおかげで今の町の人との繋がりができていて。

地元の人との交流会

「手段と結果の順番が逆だっただけなのかもしれません。

もしこの家が最初から綺麗な状態だったら、自分から頑張って話しかけに行ったりご飯に呼んで一緒に食べたりして仲良くなっていくのが一般的だと思うけど、私の場合、日中に片付けや壁にペンキを塗っているだけで、それを見た町の人が助けに来てくれて、自然と仲良くなっていきました。

町の中でも交流していなかった人たちもお手伝いにやってきてくれて、みんなで一つの家を作っているような感覚です」

何もない状態の空き家だったからこそ、彼女の家をきっかけに町の人とのコミュニケーションが生まれる。これこそが、真の“場づくり”なのかもしれない。

悩んでいる人に来て欲しい

やりたいことも見つからずに悩んでいた半年前。森の国目黒で住む中で、悩みはいつの間にかなくなっていたと和佳奈ちゃんは話す。

「今は、まず生活するので精一杯で、悩んでいる暇がないのかもしれません。
何か悩んでいたとしても、家の前に近所の方が通って、お話ししていたら、悩んでいたことも忘れちゃう。だから、もし何かで悩んでいる人がいるなら、悩んでる暇がない場所に自分が行けばいいなって思う。

朝からご近所さんとオハヨウ。

この古民家は今後、外から森の国にやってきた人が、ここの人の温かさを感じられたり、暮らしの中で当たり前にある小さな幸せに気づくことができるような場にしたいと思っています。

田舎体験やワーケーションなど、それぞれの目的で色々な人に来てもらいたいですが、自分の実体験から考えると、コロナ禍で何かしたいけど『情熱の矛先が見当たらない』と悩んでいる人に特に来て欲しいです。目黒の人たちとの交流を通して悩みが無くなったり、不自由なく生活できていることのありがたさに気付いたり、農業やこの町のことなどを聞いていく中で、新しい発見がありすぎて悩む暇がないような時間を過ごして欲しい。

そして、自分と同じように、心のモヤが晴れて、スッキリして帰っていけるような場所になればいいかな」

友達と囲炉裏を囲む

田舎に住むだけで自信につながる

森の国目黒に住み、地元の人と交流することで、地元の住民も、自分自身も元気になる、ウィンウィンな相乗効果が生まれる。和佳奈ちゃんは「目黒の人と関われば関わるほど自分が無敵になれる気がするんです」と話す。

「目黒の住民も若い人がいるだけで元気になるのかな。自分が手を振るだけで喜んでくれて。都会の生活じゃありえないですよね。

若者自体が少ないので、自分がレアポケモンになったような気分になれます。今までの自分の生活とは全く違う環境下にいると、他人からの見え方が違うように感じたり、新しい自分の価値に気づいたりすることができるのかもしれません」

都会の生活の中では、周りと比べ、自分のペースで生きることを忘れてしまう。
悩みを抱えた彼女が森の国にやってきて出した答えは、「ただ今を楽しみながら暮らすこと」だった。
目的も理由もなくてもいい。何か動き出してしまえば、何かが変わるかもしれない、そんなことを教えてもらったインタビューとなった。

ライター/井上美羽

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