RESIDENTS

森の国 Valleyの住人

No.13
森を包むママ

スナック伸枝
2021年4月、細羽家は家族で森の国へ移住した。
それも、広島県の都市から、愛媛県の「ど」がつく田舎の町へ。

今回インタビューをしたのは、細羽社長の奥さんであり、小中学生3人の娘の母であり、森の国にやってくる人みんなのママでもある伸枝さん。

2021年4月、細羽家は家族で森の国へ移住した。
それも、広島県の都市から、愛媛県の「ど」がつく田舎の町へ。

今回インタビューをしたのは、水際のロッジ細羽社長の奥さんであり、小中学生3人の娘の母であり、森の国にやってくる人みんなのママでもある細羽伸枝さん。

「一度きりの人生だったら、色んなことをやってみたいなと思って。一つのとこにずっと住むのもいいけど、いろんな場所や国で人に会って、子どもたちにもいろんな経験をさせたいと思うと、意外と抵抗はなかったかな」

そう話す伸枝さんの、森の国でのありのままの移住生活について、聞いてみた。

娘たちも自由に選ばせて

細羽家の生き方はとにかく『自由』がキーワード。小中学生の3人の娘たちも、三者三様の選択を子ども達自身が決めたという。

「親も子供に成長させられるところがあって。
たとえ自分の教育論があっても絶対そのようにいかないから、お互い歩み寄って軌道修正しながら教育していくことが大事だなって思う。今は、子どもたちに自由に選ばせてあげた方がいいって確信してる」

家の庭のブランコで遊ぶ三女のつむぎちゃん(小学4年生)

三女と次女は共に森の国に移住し、地元の少人数クラスの学校に転校することに。中学1年生の次女が『こっちの学校に通いたい』という自らの意思を示してくれたことは移住を決断する上で大きかったという。

「子どもは順応能力もあって。二人ともあっという間に田舎暮らしになれて放課後や休日も、自由に、のびのびしています」

中学3年生の長女は、自分で寮に入ることに決め、今は広島で一人で頑張っている。彼女は自分なりに、食べるもののことや、将来のことも考えるしっかり者。

「心配なこともあるけど、ちょっと留学させているような気持ちかな。彼女には、『嫌な時はいつでも言って、その時にまた選べばいいから』って話しています」

森の国で家族で過ごす時間も増えた

汚いものから蓋をしない

引っ越してきた当初、キッチンの床から悪臭が上がってきて、異臭騒ぎになったことがあったという。

「今まで、汚いものって管理人さんや誰かが全部掃除してくれていたんだということに気がついて。ゴミもあまり見ることなく、ただ外に出して、蓋をしていただけなんだって。
自分が流したものがヘドロになっていて、そのまま放っておくと臭くなるのは、当たり前だよね」

「この前、この家の排水管を辿ってみたらトイレ以外の水は、全部川に流れていたの。だからお風呂のシャンプーとか、キッチンの洗剤とかも全部そのまま隣の川に流れていて・・・。
それを知ったらすぐに、油物は必ず拭いてから捨てるようにしたし、洗剤はヤシの実洗剤に変えたし、石鹸にしたし」

「全然泡立たないやつだけど。笑」

家の隣で田んぼを始めた

「本やメディアで、『エコバック持ってできることから始めよう』『エコ洗剤使おう』という話を聞いて、頭ではうんうんってわかっていても、直ぐに行動には移せなかったんだよね。
でも、自分の家が臭いのは誰だって嫌だし、地元農家さんが頑張って作っている目黒の美味しいお米も、私が悪いものを流すことで、みんなの努力が無駄になることがわかると、すぐにやめようって思った」

「だってそこの川が泡泡なの、嫌じゃん」と話す伸枝さんは、こっちに来て、自分が出したものが、周りの環境に直結することを目の当たりにしたという。

「自分の快適な空間を保つためにも、環境や自然に悪いものはよくないって、生活しながらなんとなく実感するようになったな」

虫との共生で学ぶこと

虫も、蚊も、ゴキブリもいない快適な都会のマンション暮らしから一変。

自然に近いからこそ、ハエは飛ぶし、夜窓を開けていると、夥しい数の虫がやってくる。

「今は玄関の軒下に燕が巣を作っていて、お母さんが餌を運んでくるの。この前大きいトンボを運んできたんだけど、ポトって落としちゃって。せっかく獲ってきたトンボ、どうしよう、拾ってあげようかなって思ってたんだけど、そうしたらね・・・」

「アリがたくさんやってきて、運びはじめたの。そして10分後にはもう跡形もなくなっていて、ちゃんと自然のサイクルで浄化して、循環されてた」

「処理するもの、食するものが、自然の中にはちゃんといて、ここは食物連鎖をすごい間近に見れる。私たちもちょっとだけ自然を意識しながら生活すれば、人もその循環の中に溶け込んで、家に入ってきた虫を殺したりしなくてすむのよね。今まではそういった自然のサイクルを経験することがなかったけど、今は全部がリアルに感じられる」

ツバメのトイレ(@細羽家の玄関先)

「動物や昆虫たちから学ぶことも多い毎日です」

ただ楽しい、みんないる

移住者が増えてくることを期待しているという伸枝さんは、自分たちの家族が森の国への移住のロールモデルになることを目指している。

「全然知らない土地に家族でいきなり移住するのってやっぱりハードル高いよね。多分、ただロケーションがいいだけだと、そこまで来たいと思えないかなと思っていて」

「だから、実際に住むイメージもつけることができるように、ここにきたら人が集まって楽しそうだなって思ってもらえるように、扉はいつも開けています。
ここの暮らし、こんなに楽しいの?って思ってくれたらいいな」

家の隣のテラスで近所の人たちとゆっくりとしたひとときを過ごす

ドアは常にオープン

そう、田舎では、いつ誰が扉を開けて入ってくるかわからない。

「地元のおじいちゃんおばあちゃんが『お野菜いる?』と訪ねてきたり、近所の方が急に扉を開けて入ってきたり。笑 マンション暮らしでは考えられないようなことも起こるんだけどね。
オープンマインドって大切だなって思って」

「これから森の国に訪ねてくる人を、みんなハッピーにおもてなししてあげればみんな喜んで、そのハッピーが循環していけばいいな」

と、話している傍から「こんにちは〜」と、郵便屋さんがやってくる。
毎日必ず土間で立ち話をしてしまうそうだ。

郵便屋さんの池本さんは「田舎じゃけんね、配達するもんも少ないからたくさん話せる」と笑う。

「今度の日曜日も釣りに行く?」
川漁も得意な郵便屋さん池本さんとは、休みの日に一緒に釣りに行くことも

自然のように寛容で、水のように柔軟な伸枝さんは、相手をどこか安心させてくれる包容力がある。
地元の方だけではなく、水際のロッジで働くスタッフ、そしてここに訪れるすべての人から慕われるママだ。

一度話せば、その魅力に惹かれることは間違いない。
さあ、森の入り口、スナック伸枝(@細羽家ダイニングルーム)の扉を開けてみよう。

ライター/井上美羽

RESIDENTS一覧はこちら