RESIDENTS

森の国 Valleyの住人

No.21
地域研究大学生

プチ移住者
限界集落と呼ばれ住民の半数以上が高齢者であるこの町に、知り合いも友達もいない女子大生がはるばる遠くの町からひとりでやってきた。

あいちゃん(柏木愛)。

岩手県出身の彼女は国内のいろいろな地域に足を運びながら、地方創生という課題に向き合いながら研究をしている。

もうご存知の方も多いかもしれないが、森の国目黒は、超がつくほどの田舎だ。

限界集落と呼ばれ住民の半数以上が高齢者であるこの町に、知り合いも友達もいない女子大生がはるばる遠くの町からひとりでやってきた。

あいちゃん(柏木愛)。

岩手県出身の彼女は国内のいろいろな地域に足を運びながら、地方創生という課題に向き合いながら研究をしている。そして地域を渡り歩きながら行き着いた先がここ「森の国」だった。
今回は地域研究大学生のあいちゃんに、なぜこの町にやってきたのか、彼女が地域を研究する理由を聞いてみた。

柏木愛さん。大学3年生

自分の地元を好きになりたくて

山間にある岩手県洋野町(元大野村)という山間の田舎町出身の彼女は「地域おこしや、地方創生に興味があって・・・」と熱く語り始める。

––––いつから、そしてなぜ地方創生に興味を持つようになったのですか?

興味を持ち始めたのは、大学2年のとき(2020年)です。実家を出て静岡の大学に通っていましたが、コロナで大学がオンライン授業になり、周りは実家に帰省する人多かった中、私は地元に帰りたいと思わなかったんですよね。

その理由を考えた時に、わたしは地元のことを好きじゃないってことに気がついたんです。
田舎が嫌なわけではなくて、むしろ田舎の方が好き。

ただ、私自身も、田舎育ちなのに都会生まれの人たちと同じように、理想の田舎像を持っていることに気がついて。自分の地元を好きになりたい、帰りたいと思えるようになりたいと思い始めたのがきっかけでした。

ご近所の家庭菜園の青梗菜を抜く

––––どうして、地元が好きではないのでしょうか?

目黒は、同じ田舎でも、ぎゅっと凝縮されている感じですが、うちは家同士が結構遠いんです。なので、地域内でコミュニケーションを取りづらいんですよね。隣の人と話したことはないし、そもそも家にいる時間も少ないので、そこまでの繋がりは正直なくて。

交流が少ないためか、マイナス思考な考えが蔓延しているんです。
親戚や家族間や誰か個人の話ではなくて・・・町全体の雰囲気がそんな感じ。

そんな雰囲気を子どもの頃から感じていて、地元がなんとなく嫌だったので、自分自身が地元を好きになるために行動するという口実を勝手に作って、1〜2年前から地域ボランティアを探したり、文献読んだり、情報収集をしたりして、動き始めたんです。

洗濯物はご近所の畑をお借りして乾かす暮らし

地方創生に答えはない

––––あいちゃんから見た目黒ってどんな町だと思いますか?

目黒にきて人の近さにびっくりしました。ここに住んでいると、急に近所の人が訪ねて来ることがたくさんあります。そんな体験はここきて初めてで、まさに私が思い描いていた理想の田舎だったんですね。
さらに外からきた見ず知らずの自分にも、分け隔てなく優しくしてくれることも本当にびっくりしました。
ここまで人と人とが近い地域が、本当にあったんだって。

––––目黒にはどのような経緯でやってきたのでしょう?

同じことをずっとやってるだけだと物足りなくて、何かやらなきゃと思って、ネットで「ワーケーション 学生」みたいな調べ方をしていました。
そうしたら、ここの町の情報が出てきて、この町で古民家をDIYしながら暮らしている面白い大学生がいることを知りました。正直古民家にもこの地域にも興味はなかったのですが、直感的に面白そうだと思って。

『あぁちょっと訪ねてみようかな〜』と思って来ました。

––––今まで地方を回りながら見えてきた「地方創生」の課題ってどんなことですか?

過疎化が進む地域の中に入ってみると、そこで暮らしている人たちが、そもそも今の状況がやばいと思っていないところが課題だと思っていて。
町の人は普通に生活してるから、消滅するとか、人が減ってる、とは思ってない。若者が外に出ていくのも普通のことだと思っています。

自治体としては人口が減ると焦りはあるかもしれないですが、地元の人は知ったことじゃないし、どうするのが正解なのかもわからないですよね。

––––なるほど。かなり深いですね。地域づくりが一概に良い悪いと言えるものでもないのですね。

地域づくりが成功していると思うのは外の人。 中の人は生活をしているだけ。
そもそも地域づくりはゴールというものがないし、他の地域と比べるものではないので、客観的意見からして成功例ってしてしまうのは難しいんですよね。

同じパッケージで地域づくりできない難しさもあると思います。勉強するためにいろいろな地域を見てきましたが、ある地域にある魅力やモデルの事例を1から10まで同じものを真似することはできないので、そこから適合する良い取り組みをピックアップして集めていくとよいのかな、と思っています。

これからやりたいこと

––––地方創生について、いろいろな考えを巡らせているあいちゃんはこれからどんなことがしたいですか?

私は、地域のために動きたい、地域づくりをして日本を変えたいとは全く思っていなくて、それよりは、自分が好きになる地域を増やしたいと思って動いています。

そして、その町を好きになると、何か町のためにしてあげたいって気持ちになるんです。

ただ、自分自身が住んであげることはできない中で、関わった町のためにどうやって還元できるかを考えます。私一人がお金を落として行ったところで大きな還元にはならないし。

そこで自分が還元できるのは知識かなと思っていて。将来は、地方を回りながら、あちこち行ってアドバイスして、地域で何かを生み出すプロデューサーみたいなことをやりたいな、とぼんやり考えています。

最終目標としては自分の地元に自分がどうやって風をふかせるか。
私自身が地元を好きになって、友達を連れて行ったり、もっと大人になった時に地元に帰りたいと思えるようになれたらと思います。

本人(右)

10日間というわずかな森の国滞在の中でもたくさんの体験をして、インプットとアウトプットをしてくれたあいちゃん。
地域研究大学生、彼女の研究はこの先も続く・・・。

ライター/井上美羽


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