RESIDENTS

森の国 Valleyの住人

No.20
魅力を伝える

大学生インターン

今回インタビューを行ったのは、南国の島、沖縄から森の国にやってきた大学4年生の中村優希さん。

伝統や観光の町として知られる沖縄出身の彼女は、地域らしさやその土地の自然の魅力を伝えたいという思いを抱き、水際のロッジ(ホテル)のインターンに応募し、3ヶ月という期間の中で、森の国で新たな挑戦を始めた。

大学では地域の伝統文化や観光を専攻している中村優希さん(22)

森とキャンドルナイト

「自然が好きなんです」と語る彼女は、ここにきて滑床渓谷の大自然の魅力に惹かれ、その空間や森の魅力や美しさをどのように創造していくかを考えた。
そして、森にある素材や空間を利用した、幻想的な冬夜の世界を作り出すために、キャンドルナイトの企画を周りの人のサポートを得ながらゼロから作り上げた。

12月18日〜25日の1週間限定で開催されたこのイベントは、キャンドルを木に吊り下げ、夜空をバックに木を見上げることでいつもとは違う滑床渓谷の森の表情を感じたり、ライトアップされたモミの木のクリスマスツリーを見たりしながら、冬の幻想的な夜の森を楽しむことができる。

水際のロッジとしても初めての試みとなった今回のイベントは、地元松野町だけでなく、松山や宇和島など、愛媛県内の住民に広く周知し、キャンドルナイトを理由に遠方から滑床渓谷に訪れたお客様もいたのだという。

まるで星空の中にいるかのような空間
松野町周辺の地域住民から使用済みの小瓶を集め、
小学校の生徒が絵を描いた130個のキャンドルを並べた

ホテルを通して、土地の魅力を惹き出す

彼女は水際のロッジでインターンをする前から、「観光という枠の中で地元の魅力を発信したい」と考えており、地域の魅力を伝える方法を考えた時に、ホテルが一つの選択肢に入ってきたのだという。

「ホテルは、宿泊者にとって家のような存在でもありますよね。リラックスした状態だからこそ、その土地の自然や、地域の伝統的なものにふとした瞬間に感じることができる。だからこそ、ホテルは地域の色々な一面を見せることができる場所だと思っていて、ホテルを通して、感覚的に感じる地域の魅力を人々にもっと伝えていきたい、地域への愛着を持ってほしいと思いました」

そして、人々が地域の魅力に気づくきっかけづくりをしてみたいと考えた彼女は、水際のロッジでフロントスタッフとして働きながらホテルの接客サービスも学んだ。

「空間」を通して伝える

ホテルスタッフの経験を通して、自分のやりたいことがより明確になったのだと話す優希さん。

「魅力を伝える上で、人やもの、空間、音楽など、伝え方にも色々な方法がありますが、水際のロッジのインターンで色々と挑戦をする中で、私のやりたいことは、意外とホスピタリティー系ではないんだなということに気がつきました。
それ以上に、環境を整えるというか、その魅力が伝わる「空間」に興味があるんだなって思って」

悩みながらも動いてみると自分自身の思いと向き合うことができ、自分のやりたいことが明確になることがある。

「キャンドルナイトのイベントで気づいたことは私の中でも大きくて。このイベントも、人がガイドをして説明をするのではなく、その空間に行って自分なりに何かを感じてもらい、ここに美しいものがあるんだと感じるきっかけになればと思って企画をしました」

「この土地にもともとある自然はそのままでも美しいけれど、そのままだと飽きられてしまう。伝統とかもそうですよね。続いている伝統は、昔からまったく同じかというとそうでもなくて、現代を取り入れて少しずつ形やデザインを変えてきているからこそ続いている。
同じように、常に人を惹きつけるような価値を作り出していかなければ、人は見てくれないので、その魅力を作り出す過程に携わりたいって強く思ったんですよね。今ここにあるものを素敵だよね、で終わらせるのではなく、それに付加価値をつけ、人に見てくれるものを創り出す過程に携わりたいと思うようになりました」

『やりたい』よりもどう伝えるか

「たとえば、自然を楽しむアクティビティでツリークライミングがありますが、最初は『ツリークライミング楽しいな』から、『木っていいな』に繋がっていくかもしれない。そういうきっかけづくりに注目した方が自分は合っているんだと気づきました。

インターンでは、自分のやりたいことを達成したいと言う思いが強かったので、その中での学びはかけがえのないものでした。
今までは、自分が『やりたい』が強かったけれど、『やりたい』という思いだけではなくて、どうやったら人に魅力が伝わるのかを考えながら、相手に興味を持ってもらうための環境づくりが必要だと思うようになりました。
美しいものがあるんだよって自分がわかっているだけじゃなくて、本当に人を惹き付けるにはどうしたらいいかということを、キャンドルナイトの企画運営を通して学びました」

「将来は地元沖縄の魅力を発信するために、小さな宿泊施設をやりたい」と話す彼女は、きっとこの先も次なる挑戦に立ち向かいながら大きく羽ばたいていくのだろう。

ライター/井上美羽

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