AMBITION
森とパンレジデンス〜究極の古民家アップサイクル〜
#Event#アップサイクル#森とパン
森の国、松野町目黒集落では様々なものをアップサイクルしている。
2020年9月にオープンしたパン屋さん「森とパン」もその一環であるが、
2021年3月、「森とパン」の二階部分も見事なまでにアップサイクルを実現させ、モダンな居住空間に生まれ変わった。
「『アップサイクル』の本質は、アップした部分の付加価値の中に、個性やおもしろさ、楽しさをどう表現するかにあると思うんだ。その方法のひとつにアートとしてのサインがある。」と細羽社長は語る。
2階リビングルームに掲げられた象徴的な「MORI NO KUNI REPUBLIC」というサイン。ここに、サインがあるかないかで、部屋の内部が全く違う見え方になる。
サインに象徴されるような『アートの持つ力』は、アップサイクルには欠かせない要素の一つ。
ファブリックの柄や色合いにも注目したい。
通常、柄×柄を重ねてデザインすることは難易度がかなり高い。ここでは、カーテンや絨毯、ソファまで全て異なる柄を組み合わせながらも、各柄同士がうまく調和した空間作りを成功させた。
また、日本の住宅の特徴的な装飾の一つともいえる欄間。古民家のリノベーションにおいては欄間をそのまま残しておくスタイルが多いが、ここではあえて『ぶち抜く』ことで、二間に分かれていた空間をつなげる。
リビングと一体となった子供の遊び場の空間には「押入れにベッド」という、子供がワクワクすること間違いなしのドラえもんの世界観が広がる。
日本の古い民家では屋外と屋内の間に存在する空間として玄関と部屋の間に土間が作られていた。
田舎の日常では「ちょっとお届け物で・・・」と立ち寄った近所の家の玄関先で、靴のまま、座ってお茶を飲みながら、30分〜1時間くらいたわいのない話をする光景をよく見かける。
外と内の境界を曖昧にし、コミュニケーションを生み出す空間として、あえて広い土間を取り入れたのだという。
一階のダイニングルームでは、畑作業の後は外から土足でそのままやって来て、高めの椅子に軽く腰をかけてみんなで食卓を囲むことができる。
こだわりのデザインを追求し選んだAmerican Standard社のサニタリー。そしてStudio dirty oldmanのTAKESHI SUZUKI氏の絵画が家内の至る所に飾られている。
「壁を抜いて、ガラスにしちゃった」一階のお風呂場は、まるでホテルのようなバスルームに大変身。
壁のタイルの模様にも注目してほしい。このタイルのテイストがこの空間をおしゃれな雰囲気に仕立て上げる。また、鏡を吊るす紐も、革製というこだわりぶり。
そして玄関のブザーも遊び心ある仕掛けをしたかったのだと、細羽社長は楽しそうに話す。
「アメリカの映画とか観るとさ、玄関のベルを鳴らすと『ジー』っとなるブザーがあるじゃん。本当はその『ジー』って鳴るブザーが良くって2時間くらいみんなでネットで調べて探したりして。笑
そんなちょっと無駄で遊び心あるこだわりも結構重要でしょ。」
今や、多拠点生活や移住者の数は国内外で増えてきており、移動しながらノマド的に生きる人が多い。
生活スタイルが変化する中で、家と、職場と、もう一つの落ち着く場所として、サードプレイス(第三の場所)が求められている。
今後は、ホテルでもない、住居でもない、その間となる空間は増えてくるだろう。
「森とパンレジデンス」はそんな新しい空間、ライフスタイルを実践する場として人々が集まる、森の国への「入り口」なのだ。
ライター/井上美羽