AMBITION
10泊11日の『NAME CAMP』
#Event#NAMECAMP#夏
小学3年生から中学3年生を対象としたNAMECAMPは、10泊11日間、カウンセラーと呼ばれる大学生スタッフの下、電気やガスもない野外で、テント貼りや火起こし、包丁の使い方などを身につけながら生活をする。親元を離れ、これほど長い時間野外で生活をすることは、子どもたちにとってもちろん容易なことではなく、様々なトラブルや不便さを感じるような困難に直面する。
親から送り出され、少し不安げな表情で初日を過ごしていた子どもたちだったが、日を追うごとに少しずつ自然や仲間たちとの生活に慣れていき、心も身体もたくましくなっていく。
今回はキャンプ中の子どもたちの変化を間近で見てきた5人のカウンセラースタッフに話を聞きながら、11日間にわたる大冒険を追った。
火って熱いんだ
Q. 学校教育とNAMECAMPのような野外教育の違いってなんでしょうか?
クロ(マネジメントスタッフ):学校教育では、予め教員たちが、危険や失敗を予測した上でそれを避けるように予防策を張っちゃうんですよね。そうすると望むべき方向にはいくけど、なぜ火を触ってはいけないのか、包丁で指を切ったらどうなるかを体感して学ぶことはできない。火を触ってみて熱いねって言ったり、海でクラゲやウニに刺されたり、体験や痛みを伴って学ぶことができるのは野外教育ならではだと思います。
キャンプ中は、あれはだめ、これはだめと禁止されているルールに従うのではなく、その中で破ってもいいルール、必要のないルールを子どもたち自身で見つけてほしいですね。
相手と向き合おう
ストレスが溜まったり、トラブル続きでスケジュール通りには進まないのが野外での共同生活の醍醐味。その中でどう対処していくか、仲間と共に答えを出すというプロセスが彼らの中に大きな絆を生む。
Q. 11日間の中でチームとしての絆が生まれた瞬間はありましたか?
ねってぃ(カウンセラースタッフ):最初はお互い相手に対して思っていることがあっても、誰もそれを言わなかったんです。
でも変わったのは8日目の登山かな。登山でチームの足を引っ張ってしまった子がいて、同じ班の子どもたちもそのことでストレスに感じていました。
その時に、班の最年長の子が「みんなも頑張っているから一緒に頑張ろう」と本人には言いづらいことをあえてみんなの前で言ったんですよね。
その時に本人も、このままだとだめだ、みんなに置いていかれると気付いて、頑張る覚悟がもてたなと。
言いづらいことも、あえて人のため、チームのために言ってくれた、その一言でチームが真髄に入っていった気がしました。
個性を認めてあげる
Q. キャンプ中はどんなことを意識して子どもと接していましたか?
ねってぃ(カウンセラースタッフ):その子自身の個性を認めてあげることを意識するようになりました。今までも多様性を認めているつもりでも、自分の中の正解を無意識に子どもに押し付けてしまっていることもあって。
言ってもできないこともあるだろうし、その子の家庭環境、考え方も違うから、直さなくてもいいことだと思ってあえて言わないようにすることもありました。
実際は、私たちが言わなくても子ども達自身が変わろうとしてくれたから、その個性を認めてあげることが大切だなと思います。
感情に正直に
天候や気温など環境の変化も、人間関係の形成にも大きく関わる。
予測も回避も不可能な自然の環境下で過ごすことで、感情が剥き出しになってくるのだ。
Q. 子どもと接する上で、難しかったこと、勉強になったことはありますか?
ソイ(カウンセラースタッフ):自分が子どもにかける一言で、彼らの感情や行動ってすごく変わるんだと実感しました。
子供は素直でなんでも思ったことを口にします。
登山中「頑張れ」と声をかけたら、「がんばってるよ!」と言って休憩し始めちゃった子がいたんですよね。その時にあぁ、かける言葉を間違えたかなー、って反省して。それから、すごく考えて、言葉をかけるようにしました。
それと、自分の思ったことを口にしないと話してくれないということも学びました。「なんで泣いているの?」と聞くのではなく、「ソイは君がなんで泣いているのかが分からないから、それが悲しい。」と自分の思いを伝えてあげると、少しずつ子どもも思っていることを話してくれるようになりました。
子どもから学ぶ
カウンセラー自身も、子どもと接する中で多くのことを学ばされる。
Q. 子どもを通して自分が成長したな、と思うことはありましたか?
クック(マネジメントスタッフ):キャンプ中、「ありがとう」「ごめんなさい」という言葉を相手に伝えなさい、と子どもたちに強く注意してきたんです。
でも子どもたちに指導しながらも、自分自身がありがとうとか、ごめんなさいを言わないタイプなんですよね。子どもたちや、他のスタッフがそうした言葉を発する姿を見て、無意識に言葉が耳に入るようになってきて。
子どもをみて、自分を見直すきっかけになるとは、まさにこういうことだと思います。
ぼく(カウンセラースタッフ):子供の成長が自分の予想を超えてくるんです。毎日同じように接しているとこっちが置いていかれる。
彼らはどんどん大人になっていくので、子供の成長に合わせてカウンセラー側も接し方を変えていかないといけない。
このキャンプを通して、今までは目先のことしか見えない人間だったけれど、先のことまで意識できるようになりましたね。
11日目、閉会式ではカウンセラーたちから子どもへの最後のメッセージが届けられる。
「このキャンプがゴールではありません。みんながそれぞれお家に帰ったらそれぞれの生活が待っています。みんなが今成長したなと思っていること、それを生活に生かすように。みんなができることを考えながらもっともっと成長してほしいと思います」
子どもにとってだけでなく、大学生のカウンセラーにとっても、そして子どもを送り出した親にとっても、大冒険となった11日間のNAMECAMP。最後はキャンプディレクターのまいまいの言葉で締め括られる。
「このNAMECAMPは今後みんなのお守りになります。まいまいも今までいろんな大冒険や怖いこときついこともあったけど、新しいことをチャレンジする時にはこうした経験がいつもお守りになって背中を押してくれます。このNAMECAMPが明日お守りになる人もいれば、半年、5年後、10年後の人もいるかもしれない。それまで大事にみんなの心の中にしまっておいてくれると嬉しいです」
ここに集まった9人の子どもたちと、7人のスタッフで開かれるNAMECAMP2021はもう2度とこない。
しかし、NAMECAMP2021というお守りはこれからも子どもたちの心の中で輝き続けるだろう。
ライター/井上美羽