AMBITION
森と喫茶〜旅するタルト屋さんの挑戦〜
#Eat&Food#Event#森と喫茶
目黒集落で一際目立つ黄色い看板の「森とパン」
昨年(2022年)いっぱいでパン屋としての営業を一時お休みすることになった。
しばしのお別れに常連の住民からも寂しいという声があがる中、森とパン再オープンに先駆けて、集落のコミュニティの場となっていた月に1度の「喫茶森とパン」がパワーアップして帰ってきた。
旅×タルト
3月上旬に行われた森と喫茶は2日間限定の「春のタルト祭り」。
旅をしながらタルト屋さんを営む埼玉出身の21歳の女の子(通称:タルトちゃん)が店に立った。
自分の店舗を持つという夢を掲げる彼女は、店舗の場所探しとファンづくりを兼ねて全国各地のイベントに出店している。
彼女が目黒地区を訪れるのは今回で3回目。1回目に訪れたときは、なんと埼玉から6台の車をヒッチハイクして森の国までやってきた。
元々旅仲間だった友人の紹介で目黒地区を知り、住民との交流や大自然での心地よい暮らしに魅力を感じたと話す彼女は、今回も、目黒住民のあたたかい雰囲気が出店に対する気持ちを後押ししてくれたという。
タルトちゃんは自身が好きな旅と小さい頃からの夢であるケーキ屋さんを掛け合わせた出店方法で、これまで長野、京都、和歌山など、さまざまな土地で出店をし、全国にファンを増やし続けている。
旅するタルトのこだわり
イベント出店するその土地ならではの食材を使うことが、旅するタルト屋さんとしてのこだわりだ。
森の国では、早朝から目黒地区のいちご農家さんの元を訪ね、生産者さんのご厚意で自ら収穫させてもらえることになった。
「収穫するところから食材を調達するのは初めて!」と、期待に胸を踊らせていちごを摘んでいく。
目黒産のいちごに加え、道の駅で購入した愛媛県産の柑橘3種(清見タンゴールド、はるか、ブラッドオレンジ)を乗せて、特産フルーツタルトを作り上げた。
自分なりの表現方法
「タルトちゃん」という呼称は、ケーキ作りが好きだという理由で、旅仲間からつけてもらったニックネームだという。3年前、感染症拡大の影響で世界一周の夢が延期になったことをきっかけに、「この期間にタルトケーキ屋さんとして1つの形にしよう」と思い立った。
「味や見た目を自分でアレンジする。この“作る”という表現方法が好き」という彼女は、専門学校に通ったりお店で修行したりはせず、独学でタルトを作り続けている。
旅先の食材を使った独自のタルト作りは、彼女の旅人精神の表れでもあるのだ。
そんな自分なりの表現方法を追求する彼女はタルト作りの魅力をこう語る。
「タルト作りは誰かの誕生日とか特別な時間の幸せに寄り添うことができるし、食べてくれる人の幸せをお裾分けしてもらった気分になれるんです」
春のタルト祭り
季節のフルーツタルトに加え、他のイベントで大人気だというちょっぴり大人味のティラミスタルトをケーキスタンドに並べ、いざ開店。
噂を聞きつけた地域住民が続々とやってくる。
2日間の販売で合計約80個を売り切る盛況ぶりにタルトちゃんもびっくり。
喫茶形式での出店は今回が初めてだったという彼女は、森と喫茶をこう振り返る。
「いつもとは違って今回は食べてくれた人の反応を目の前で見ることができたから嬉しい反面、緊張もしました。でも美味しいって声を聞けたし、ドリンクを一緒に出したり自分のタルトでプレートを作ったりと、初めての経験が目黒でできてよかったです。」
これからも、各地のイベントに出店したり、全国のファンに向けたネット販売を始めたり、挑戦を続けていくタルトちゃんにとって、目黒での出店は自分の力を試す機会になったようだ。
この冬、彼女は遂に延期になっていた世界一周の旅に出発する。彼女はまだ訪れたことのない、未知の土地で驚きや感動に満ちた体験をすることだろう。彼女の冒険に心を躍らせ、その帰りを森の国で待ちわびよう。
ライター・撮影/ 高橋和佳奈
編集/ 井上美羽