AMBITION

森の国 Valleyの挑戦
2024.02.29
水際のキャンパス

限界集落の暮らしに溶け込む親子旅

#Event

「地方創生」という言葉を昨今よく耳にするようになった。都心に若者が集まり、地方の若者人口が減っていくという課題が顕在化している一方で、若者の地方移住、地域での起業や地域の価値を再発見する取り組みが注目されている。

愛媛県松野町目黒集落は昭和30年ごろには1500人の住民が暮らしていたが、現在は人口270人の限界集落となっている。しかし、県外からの若者移住者や家族移住者が毎年増え、高齢化比率は3年で3%減少した。最近は「森の国Valley」と称するコミュニティを中心に、子どもから大人まで、多様な人々が行き交う集落になりつつある。

オンラインで物事が完結し、人とのつながりが希薄になりつつある現代社会において、人間が自然の中で心地よく暮らすためには・・・という大きな問いを抱えながらこのまちにやってくる若者は、新たな価値観を見つけて故郷に帰り、またやってくる。なぜ松野町目黒に若者が集まるのか。そして、これまで「当たり前」とされてきた常識が覆されるいま、高校生たちは自分たちの未来をどのように捉え、どう形作っていくのだろうか。

「暮らしのあり方」ってなんだ?松野町目黒で考える私たちの未来

東京都中野区にある新渡戸文化高等学校は2021年に、一般的な集団行動型の修学旅行のスタイルを廃止し、高校1・2年合同の「旅する学校」と呼ぶスタディツアーを実施した。自分で行き先を決めて、生徒自らが自分の旅行をデザインすることができるこのプログラムの旅行先候補の1拠点として2023年、愛媛県松野町目黒が加わった。受け入れ先は、本地域を拠点に森の国Valleyと呼ばれるコミュニティ創りを行う株式会社サン・クレアを主軸に、地元のおじいちゃんおばあちゃんや若者移住者などの住民だ。2023年11月に実施された第一回目の3泊4日間にわたる松野町目黒のスタディーツアーには、5人の新渡戸文化高校生が訪れ、目黒集落の暮らしを体験してもらった。

そして2024年春、前回松野町目黒集落に訪れた中内潮音さん(高校2年生)と大坪しずくさん(高校2年生)が周りの高校生や親にもこの町の体験をしてほしい、という想いから親子向けの新たなプログラムを企画する。

◾️彼女たちの想い

ーなぜ松野町目黒でツアーを企画しようと思ったのですか?

しおん:私は、町づくりや地域活性化について学びたくて、これまで人口が少ないまちにたくさん行ってきました。

いろんな地域に行き、現地の方のお話を聞く中で、地域の高齢化や過疎化問題は、移住してきてもらうという形でしか解決できなくて、私にできることはあまりないと思っていました。

でも、今回松野町目黒に行って「関係人口」という観点を知り、その町と関係がある人を増やしていくことで、町を活性化するという方法を学びました。

しずく:私もこれまでスタディツアーを通じて地方を巡りましたが、私にできることって何だろうって思ったときに、あんまり思いつきませんでした。知ってもらうまでしかできない。でも、松野町目黒は人に知ってもらうこと、自分が関わっていくことがゴールだから、何か自分たちにもお手伝いできることがありそうだと思いました。

ー他の地域にはない、松野町目黒の魅力はなんですか?

しおん:これまで、スタディツアーを通じて、3つの地域に行きました。他の地方でもそれぞれ面白い発見がたくさんありましたが、松野町目黒は人口は一番少ないのに、一番活発なまちだという印象がありました。松野町目黒は、暮らしを形づくるものの中で、食と人との関わりがすごく深かったんです。これまでのツアーは、私たちが来るから交流会をするとか、スタディツアーありきのプログラムだったのですが、松野町目黒は、中身がプログラムされていなくて、偶然の人との出会いとか、町の生活に入ったような感覚になれました。

例えばお野菜を、隣の農家さんからもらってきて、その日の夜ご飯をみんなで自炊したり、泊まっている古民家で、住民が夜集まってきて、予定していなかったのに宴会が始まったり、食と通じた「暮らし」が日常的に起こっていることが衝撃的で。

しずく:他の地域では、別の仕事をしながらその地域に「住む」という感じだったのですが、松野町目黒は「暮らし」っていう感じがした。「暮らす」だと、仕事も一つのことにとどまらず、何でもできる。例えば、サン・クレア代表の細羽さんはホテルを経営していながら、目黒地域に家族移住されて、畑も米も小屋も自分で作って、さらには山の木を伐採まで自分でやっちゃう。

松野町目黒で出会った人たちは、全部充実していました。

あと、林業をやってる方が森に対して大きな思いを抱いてるだけではなく、町の人みんなが、森に対してリスペクトがあるっていうのも印象的でした。自然や食を自分たちの暮らしに繋げているような印象でした。

ーそもそもなぜ、地方に目を向けるようになったのですか?

しおん:中学生の頃から町づくりや古民家に興味があって、「新しく家を建てるより、古民家や空き家を再生してった方がエコじゃない?」って思っていました。日本は過密と過疎の振り幅が大きいと思いますが、人口が少ない町が今どういうまち作りをしているのか、自分たちは人口が少ないから増やさないとって思うけど、実際にその地域に住んでいる人は外の人に対してどう思っているのか、というリアルな声を聞きたくて、そういうものを学びたいなと思っています。

しずく:わたしは、以前は建築家を目指していて、「住む人にとって良い家を作りたい、住む人とっての理想の家を形にしたい」という思いがあったんですけど、それだけじゃだめだなと思ったんです。特に松野町目黒では、それが地域のためになるのかとか、何か新しいものを作らなくてもそこにあるものを活かせるんじゃないかっていうまち作りの観点を知ることができました。

ー今回企画中のこのプログラムでは、誰にどんなことを伝えたいですか?

しずく:私は松野町目黒でいろんなことをしてる人に出会って、田舎で暮らすからこそ見えてくる生き方を知って、進路への見方が変わりました。一つの職業にとらわれない生き方を想像しやすくなった。それを周りの高校生にも体感してほしいので高校生を対象にしました。

でも、やっぱり進路って1人で決められるものじゃない。

親って高校生にとって結構大きい存在です。私自身も将来について親と相談して決めたい。親にも自分が選んだ道を認めてほしいし、こういう生き方でも幸せだよっていうのを知ってもらいたい。そしてそれは私たちから口で伝えるんじゃなくて、一緒に感じたいと思うんです。

しおん:将来のこともそうなんですけど、中高生って、親と関わりにくい感じがあったりもするんです。やっぱり松野町目黒での体験を親子で共有しながら、「暮らし」てもらうことに繋がったらいいなと。

ー今回のツアーの内容を教えてください。

しおん:まず、食事は自炊をしてもらいます。まず、親子別々に食材を地域内で集めてきてもらって、さいごは一緒にご飯を作って食べます。あえて親子で別々の体験をして、最終的に合わせて一つのものを達成します。その取り組みを通して、今の中高生と親の関係性が深くなればいいなと思ってます。

2人で同じ経験をするよりも、後から共有し合う仕掛けを大事にしています。お互いの経験をアウトプットすることで、自分の経験がどういう学びに繋がったのか整理する機会にもなると思います。

ーどんな人に来て欲しいですか?

将来の夢がもう既に決まってる子。最近決まったことじゃなくて、ずっと前からこれになりたい一心で進んでることに何かその他の視点もあるよって伝えたいなと思います。その道が駄目って言ってるんじゃなくて、その道にこだわっている理由があるなら、自覚して、何か自分の中で思ってほしいし、もしプライドで、それを目指しているのであれば、別の視点もあるよっていうことを、個人的には知ってほしいなっていうふうに思います。

【企画者】中内潮音 17歳/東京出身・大坪しずく 17歳/福岡出身

スタディーツアーで伺った松野町で、この地この機会でしかできない体験を沢山しました。普段とは違う暮らしの形を知ることで、さらに世界が広がるような、そんな感覚がしました。自然と人が深く関わりあう町で、新しい暮らしの形や町との関係など、普段の生活では経験できないことを肌で感じました。それを他の人にも感じて欲しいと思い、今回のツアー企画に至りました。将来進む道に迷っている人、進路がもう決まっている人でも確実に得られるものがあります。自然と人にふれ、新しい価値観を得る旅で、皆さんをお待ちしています!

親子でわくわく 松野町ツアー詳細

◾️開催日:2024年3月28日〜30日(2泊3日)

◾️対象:全国と高校生と親(最大6組・2〜3人 x 6組)

◾️ツアー料金:一組60,000円(税込・親子2名の場合) 
高校生含む大人1名追加の場合、お一人様30,000円
中学生以下の場合、お一人様15,000円 未就学児以下無料
※民宿、水際のキャンパス等への宿泊費、Selvaggio、森とパン、自炊等にかかる食費、野菜収穫などのプログラム費などを含む。
※現地までの交通費は含まれません。
※水際のキャンパスに前泊も可能です。追加料金はお一人様6,000円となります。

◾️集合/解散場所:松野町目黒386-1『森とパン』
※松山空港から現地までの移動はレンタカー(推奨)、もしくはJR線電車で可能です。(宇和島駅-目黒地区までは無料送迎あり)
※水際のキャンパスに前泊していただくことも可能です。

◾️開催地域:愛媛県松野町目黒
愛媛県の最南端には、一番小さな町松野町があります。その中の目黒地区は、人口は270人の限界集落。四万十川源流の清らかな水が流れる自然豊かな町です。

◾️滞在場所:目黒集落内/水際のキャンパス

◾️参加申込方法:「ツアー参加希望、お名前、人数、携帯番号」をご記入の上、下記連絡先にご連絡ください。

◾️主催:株式会社サン・クレア 

◾️お問い合わせ先:info@morino-kuni.com/0895-43-0331(前川真生子宛)