AMBITION

森の国 Valleyの挑戦
2021.01.25

森とパンproject

#Event#森とパン

逆風は追い風に。

2020年3月。
新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう未曽有の事態。
世界中の人が不安と絶望を抱える、そんな時に、とある一家が森の国にたどり着いた。

家族の持ち物は、ほんのわずかな荷物。
そして、押しつぶされそうな不安。

本当だったら…
もしも、新型コロナウイルス感染症がなかったら…
今頃は。

その家族は、塩出リュウジさん、奥様のナオコさん、そして2人の子どもたちだった。
リュウジさんは、水際のロッジを経営するサン・クレア代表 細羽雅之さんの高校時代からの友人。
大手商社勤務を経て、キャリア転職をし、アメリカで活躍していた。
しかし、ナオコさんの夢を叶えるため心機一転!
勤めていた会社を辞め、3月にはアメリカ カリフォルニアでベーカリーカフェをオープンさせる予定だった。

渡米準備を全て済ませ、「さあ、これから!!」という時に…
コロナ禍に巻き込まれてしまったのだ。

当然、アメリカへの入国許可など下りるわけなどない。
家も家具もすべて手放してしまい、ただただ途方に暮れるばかりだった。

まったく予測のつかない入国許可を待ち、東京でホテル暮らしを続けていた、そんなある日。

細羽さんが声をかけた。
「東京で悶々としてるなら、森においでよ」

その1週間後、一家は森の国にたどり着いた。

四万十川源流、森の国。水際のロッジ
休業中の森の国ホテル


偶然にも、休館中の森の国ホテルには業務用のオーブンが…。
リュウジさんとナオコさんは、朝から晩までひたすらパンを作った。

来る日も来る日も。
まるで不安を打ち消すように。

そのパンを食べた人、みんながあまりのおいしさに感動をしていた中、
1人の水際のロッジのスタッフがポツリと口にした。

「私も焼いてみたいです。」

それは「森とパン」プロジェクト誕生の瞬間だった。

BrioBrioのパン

ナオコさんは、秘伝のレシピを惜しげもなく教えてくれた。
そして、松野町の恵みを生かした新しいパンも誕生した。

スタッフの岸本有希さんは、毎日 何十個、何百個とパンを焼き続けた。
ナオコさんは、根気よく、細かなところまで教え続けてくれた。

ようやく、ナオコさんの手助けなく、パンが焼けるようになった6月。
塩出家はアメリカへの緊急入国ビザを取得。
無事に渡米することができたのだ。

7月には、念願のベーカリー「BrioBrio」がカリフォルニアにオープンした。


そして、塩出家が旅立って、3か月後。
9月19日に人口270人の松野町目黒集落に「森とパン」はオープンした。

お店の看板は、地元の小学生に公募。
誰にもまねできない、伸び伸びとした元気いっぱいの文字。
「森とパン」のイメージにもピッタリのものが完成した。

地元の小学生が書いたロゴ
開店初日から大行列

オープン日は近所の方もたくさん訪れ、店頭には長蛇の列。
この日岸本さんが焼き上げたパンは、わずか30分で完売!

これからも、まちのみんなに愛されるお店であり続けたい。
コロナで苦しみもがく中に差し込んだ一筋の光が
やわらかな日差しとなって愛情あふれるパンを生み出した。

偶然を必然に。繋がるご縁を大切に。


ライター/東 真貴