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天然にも負けないサステナブル鯛、タイチロウくん

父の代から続く真鯛養殖業を継いだ徳弘多一郎さんは、13年もの間、ヴァージョンアップを重ねて、天然鯛に劣らない、より美味しい鯛を追求し続けてきた。
そして遂には全国のレストランシェフからも愛される鯛「タイチロウくん」が生まれたのだ。

「天然に劣らない美味しい養殖鯛を作りたい」

父の代から続く真鯛養殖業を継いだ徳弘多一郎さんは、13年もの間、ヴァージョンアップを重ねて、天然鯛に劣らない、より美味しい鯛を追求し続けてきた。
そして遂には全国のレストランシェフからも愛される鯛「タイチロウくん」が生まれたのだ。

SELVAGGIOでも前菜やピッツァで提供している「タイチロウくん」はもはやお店で欠かせない存在となっている。

ブランド鯛として全国のシェフを唸らせたタイチロウくんのおいしさの秘訣は、「エサ」と「言葉」にあった。

今回はタイチロウくんの誕生秘話から、サステナビリティに向けた会社の取り組みについてなど、鯛を愛してやまない熱い男、多一郎さんのお話を伺った。

エサづくりへのこだわり

やってきたのは、宇和島市にある株式会社タイチ。

愛媛県は、真鯛養殖の日本一の生産量を誇り、その中でもミネラルや栄養分を豊富に含む黒潮が流れる宇和海の鯛の養殖業は、国内のシェアの大半を占めている。

養殖業を継いだ当初は、世間一般からの養殖鯛に対する評判はあまり良くなく「養殖鯛は臭いから使わない」とシェフから言われたという。

その一言がバネとなり、美味しい鯛の研究を始めた多一郎さん。

そして、行き着いたのは「エサ」だった。

なるべく天然の物を使い石油由来のものを使わない餌にこだわり続けた結果、脂身も多すぎず、健康的で美味しい鯛に生まれ変わったのだ。
今では多くのシェフにも認められ、全国各地様々な飲食店の看板メニューとして「タイチロウくん」は人気を誇っている。

言葉の力

また、科学のデータに基づき美味しさを追求し続けたタイチロウくんは、実は科学だけでは証明しきれない秘密もある。言葉の力だ。

「言霊ってあるじゃないですか。僕はそれを信じているんです」
と多一郎さんは語る。
毎朝、『おはよう』『ありがとう』『愛してるよ〜』と声をかけながら餌をあげているんです。言葉には魂が宿っているので、こうして愛のある言葉をかけると、美味しくなるのは間違いないです」

サステナブルな養殖を目指して

そして株式会社タイチが特に力を入れているのは、海の資源を守るサステナブルな取り組みである。

例えば、藻場づくり事業への参加は今年で8年目になる。
「藻場は、小魚が隠れたり、イカが産卵する場所だったりするんですよ。昔は、藻場が豊かにあったのに、今はもうあまりなくて魚が生きる場所が減ってきてしまっているんです。」

また、海のゴミ拾いを社員みんなで毎月1回行ったり、より魚が幸せな環境で過ごせるように、生簀に入れる魚の数を減らしたりしている。

これからやりたいなと思っているのは、リジェネレーション(環境再生)です。魚は毎日餌を食べ、毎日フンをしますよね。餌の中に発酵物をいれたら、フンに微生物が含まれて海の浄化につながらないかと考え、現在実験中です。また、餌にはなるべく魚粉を使わずに、他の方法でタンパクを取れるような原料を大学の研究室の先生と共に探し中です。」

今年5月に海のエコラベル『MEL認証』も取得したタイチロウくんは、今後もさらなる美味しい鯛の追求と同時にサステナブルな社会の実現に向けて、次々と新しいことにチャレンジする。

お話を終えると、最後に奥様が宇和島名物「鯛めし」を振る舞ってくれた。

プリプリとして圧倒的な弾力があるタイチロウくんは、熟成すると味が濃縮し、より旨味が出るのだという。

SELVAGGIOでもでタイチロウくんの美味しさを120%味わえるよう、カルパッチョや、ピッツァ、ホイル焼きなど様々な料理スタイルで提供している。

一度この味を知れば「養殖鯛なんて・・・」とは言わせない!

徳弘多一郎さん(左)と奥様の清子さん(右)

ライター/井上美羽