森の国

HARVEST

森の国の収穫

ひとつたりとも無駄にはできない完熟梅

土のもの

梅雨だ!梅だ!収穫だ!

今年も梅の収穫の時期がやってきた。
梅の収穫は、6月から7月の梅雨の時期と重なる。
日が昇る前、早い日には朝の5時から梅の収穫は始まる。

毎朝、早起きをして梅畑に向かうのが、最近の森の国での僕の日課となっていた。

集合の時間になると梅を入れるケースを荷台に乗せた毛利夫妻の軽トラがやってくる。
毛利夫妻は、森の国でさまざまな野菜や米を育てている農家さん。

「今日もありがとね。よろしくお願いします。」と、毎回毛利夫妻は笑顔で声をかけてくれる。

梅の木の下には青いネットが一面に敷かれている。
これは、ネットを引くことで梅が枝から落ちた時に傷つけないようにするための工夫である。
毎朝収穫しているのにも関わらず、その青いネットの上には無数の梅が落ちている。
青色の上にある黄色や赤色を見るとまるで青空に星が輝いているかのように見える。
その光景は、1番落ちている早朝にしか見れないので早く起きた者だけの特権だ。

  一個一個丁寧に収穫する

梅仕事は、12月からは特に忙しくなる。梅の枝の剪定をしなければならないためだ。
枝の剪定とは、上と下の枝が重ならないように枝を切ったり、太陽の光が当たるように枝の長さを調節したりする作業のことだ。
今年、毛利さんは枝の剪定を年明けの2月まで行ったという。

6月上旬に下草刈りをして、青いネットを張る。
また、梅の実がなるまでには苗を植えてから4〜5年かかるというから、なかなかたくさんの労力がかかっているようだ。

     気を配りながら剪定する

今年の梅の収穫は6月中旬からはじまり、全て収穫をし終えたのは、7月中旬。

早い時には朝の5時から行うこの作業を一ヶ月間毎日続ける。
なぜ朝早くから収穫するかというと、太陽の日差しが梅に当たると傷んでしまうためだ。
どんなに雨が降っていても風が吹いていても休む日はない。
そのため、雨が雨具に入り込んで中の服が濡れることも多々ある。

毛利夫妻が着用している防水性の高い雨具も度重なる雨のためしばらくするとビチョビチョになってしまうこともある。

作業時間は人数にもよるが、4〜5人で行えば1時間程。
しかし、毛利ご夫妻二人で梅の収穫を行っていた時は、3時間ほどかかっていたという。
また、梅を拾う際は、中腰になったり、ずっと頭を下にしたりしながら収穫するので、姿勢は決して楽なものではない。

注意を払わないといけないのは体の心配だけではない。

梅の甘い香りに誘われてたくさんの動物たちが梅を食べにくる。
たくさん食べにくるのは美味しい梅の証拠ではあるのだが、食べられないための工夫をしなければいけない。
そのために、光るランプをネットに置いて動物よけをするなど、梅を収穫する時の苦労は数多くある。

収穫した梅を軽トラの荷台に乗せてあるケースの中に入れる。
ピーク時には、12ケースほどになるときもある!(1ケース20キロほど)

ケースいっぱいの梅からは、桃のような甘い香りがする。
この香りを嗅ぐと目がシャキッとし、大変な作業中でも「後一踏ん張りだ」と頑張れるのだ。

梅の匂いはクセになる

毛利さんの梅は、「青梅」ではなく「完熟の南高梅」である。
枝から梅を取るのではなく熟して枝から落ちたものだけを拾う。
そのため、青いネットを張ったり、早朝から収穫したり、丁寧な扱いが必要になる。

梅の作業は収穫だけでは終わらない。毛利さんの自宅へ戻ると梅の選果が始まる。選果とは梅を仕分ける作業のことだ。

毛利さんと取引している方に出荷する傷もなく大きさもちょうどいいS、大きさはある程度あり傷も斑点もなく色もいいA、少しの斑点と小さな傷ありのB、斑点が多く傷んでいるCに分かれる。

 みんなで協力しながら選果する

最初は、梅の良し悪しがわからないので選果にかかる時間は時に梅の収穫以上の時間になる。
そのため、効率よく選別を行わなければならない。
「最初に全体をみてCを仕分けする。時間をかけなくても簡単に仕分けできるからね。あと残った梅を選別していく方が効率いいよ。」

と、毛利さんは作業のコツを僕らインターン生や梅の収穫にお手伝いに来た人たちに教えてくれる。
そのおかげで、7月中旬の梅の収穫が終わる日には僕らもまるでプロの仕分け人のような手捌きになる。

梅の収穫から選果までの一通りの作業を体験すると、一つの食材が出荷されるまでの間にどれだけの労力と時間がかかるかを思い知らされる。
これだけ丁寧に時間をかけて育てた梅なのだから全部AかSに入れたいという思いにかられるのは、僕だけではないだろう。

選果を終わらせてようやく出荷。

一連の工程を経てほぼ毎日梅を出荷する。
そこには毛利さんの梅に対する愛情がたくさん詰まっており、梅ひとつたりとも無駄にはできない。
毛利さんの梅の収穫は、畑の隅に落ちている梅まで一つ残らず収穫する。
その一コマを見るだけでも、梅を大切にしているのかが伝わってくる。

また毛利さんは無農薬のお米の生産もしており、米の草引きの時期と梅の収穫の時期が被る。
梅を出荷したら終わりなのではなく、そこから別の作業が始まる。
いつも笑顔な毛利さんだが、時に、朝目を擦って眠たそうにされている。

「辛いと思ったことはないのですか?」と、聞くと「辛いと思ったことはないです。ただ、やりたいことが多すぎてスケジュールが間に合わなくなる焦りは少しあります。」と答えていた。

毎日、休む暇もなく作業をしているのに辛い気持ちではなくお客様のことを思う気持ちが強い毛利さんに僕はとても感銘を受けた。
人を想う気持ちと言葉で表現するのではなく、相手を思いやる気持ちを行動で体で伝える毛利さんはとても格好いい。

InstagramやFacebookなどのSNSで、届いた梅について感想をいただくのだそう。

「いつも美味しい梅をありがとう」「宝石みたいな綺麗な梅!」

そういった、言葉ひとつひとつが毛利さんに刺さる。

「収穫をしている時も選果している時も、いつも頭にあるのはお客さまの梅をもらって喜んでいる姿です。その姿を想像しながらいつも頑張っています。そして、喜んでくれる人が1人でも2人でもいてくれたなら、また来年収穫をしようと思う気持ちになります。」と語っていた。

その話には毛利さんの食に対する情熱的な思いがあった。

「食べ物は人づくりの役割を担っています。
しかし、現実社会では添加物が多く、栄養源になるものが悪いという現状があり、そのせいで精神的に病んでしまう人もいます。
だから、安心安全な食物を作って、たくさんの人に食べてもらい、健康に過ごしてもらう。
それが、明るい社会作りに繋がります。そして、その想いが私の頑張れる源です。」

「たくさんメッセージもらったんだ!」と沢山のメッセージを見せてくれた
毛利さんの人柄も垣間見える梅収穫。

来年もたくさんの笑顔のために梅を収穫する。

ライター・撮影 / 杉山寛哉
編集 / 井上美羽

  • 月のバイオリズムに合わせて作る目黒米

    滑床渓谷の大自然の恵みを含んだ清らかな水と、大自然の土壌から栄養をたっぷり吸い込んで育った『目黒米』。のぶりん農園では月のリズムに合わせて土壌菌を撒く日を決め、手帳に農作業の予定を入れていく。

    SHOW DETAIL

他の土のものたち。

ここでしか味わえない森の恵みを、
みなさまの食卓に。