HARVEST
草刈り農家、OKBFARMの無農薬みかん
みかん畑の山の上でゆるやかに話すのはOKB FARM(大久保農園)の大久保幸裕さん。
「一年のうち10ヶ月は草刈りしてるかなあ」と話す彼は、10年ほど前に実家のみかん農園を独立し、一人で独自の農法と販売方法で柑橘農園を始めた。
「農薬防除がどうしても嫌で。自分の体に悪くてしんどいし・・・。」
みかん畑の山の上でゆるやかに話すのはOKB FARM(大久保農園)の大久保幸裕さん。
「一年のうち10ヶ月は草刈りしてるかなあ」と話す彼は、10年ほど前に実家のみかん農園を独立し、一人で独自の農法と販売方法で柑橘農園を始めた。当時一般的だった、慣行農法で人気品種を市場に卸すというやり方ではなく、無農薬多品種栽培で個人向けに販売する、といったニッチな路線でやりたいと考えていたのだという。
SELVAGGIOでは、OKB FARM(大久保農園)から農薬や防腐剤を一切使わない柑橘を仕入れ、ピッツァや、デザートとして提供している。
今回は愛媛県有数のみかん生産地、吉田町にやってきて、大久保さんにインタビューを行った。
みかん生産地の吉田町
愛媛県の南西部、宇和海に面した地域の宇和島市吉田町は、江戸時代から柑橘生産が盛んな地域だ。
みかんは、水捌けが良く日当たりの良い山の傾斜面が生産には適しているといわれ、海岸線に山の傾斜面が広がる宇和島市や八幡浜市は愛媛県のみかん生産を支えている。
2018年7月7日の西日本大豪雨で被災し、園地だけでなく、倉庫の中の在庫や道具まで全て流されてしまった大久保農園は、3年間かけて復興をし、片付けをしながら、新たに苗木を植えまた一から育てているという。
お客さん一人一人に届ける
レストランや個人向けに、一人ひとりとやりとりをしながら販売をしているOKB FARMでは、注文を受けてから収穫をし、新鮮なみかんを翌日に手元に届けている。
「うちのがね、他よりいいっていうわけじゃなくて。お店で買うと収穫から時間が経っているから、どうしても甘いだけの水っぽいみかんだったりするんだよね。うちで注文してもらうと、採りたて特有の香りとか酸味が感じられると思う。
味に関して僕ができることは一番いいタイミングで収穫すること。糖度をのせていくためになるべく収穫時期を遅らせるけど、収穫時期を逃すと味がボケてきたりするから、そのタイミングが大事」
西日本で一番草刈りしている柑橘農家
一年間の農作業で草の処理が一番大変な作業だ。7〜8haの園地の草を、一人で刈る。「1年間のうち10ヶ月は草刈りしてる。西日本で一番草刈りしているって売り込んでいるんです笑」と話す大久保さん。
「他の農家さんの園地が隣接している場所では、無農薬で虫や病気を発生させてしまうと周りに迷惑をかけちゃうから、無農薬の柑橘と減農薬の柑橘を場所や品種によって使い分けていて。
ただ、無農薬のところは肥料は一切やらないし、除草剤も、防腐剤も使わないんです。その年の気候でできたものを商品として売っている。
農園によってやり方も、味も全然違うし、無農薬が美味しいというわけでもない。正直、味を美味しくするなら肥料使って美味しく仕上げた方がいいし、生産だけに集中して決められた出荷日に向けて、一気に収穫してまとめて卸した方が楽だけどね。
ただ、農薬散布は、散布する自分にもすごい負担があって、自分でも吸い込むとふらふらするし、身体に悪いわ〜と思うよ」
生の声を聞きながら
「無農薬が絶対というわけではなくて。僕の場合はタバコ吸うし、化学調味料大好きだし(笑)。全然こだわりはないんだけど、こういうのを求めている人がいるから作っているんだ。
若めの世代や料理人は香りやみずみずしさを大事にしてくれるので、そういうのはありがたいですね。
お客さんもエコを意識した方も多くて、ラベルいらないとか、袋いらないとか。
だから、今は加工品として販売しているみかんジュースもラベルなしで瓶のまま販売しています」
この土地と気候で、できたみかんをお客様に届ける。
既存の仕組みに捉われず、周りの人に左右されず、自然の流れに沿いながら無理せず生きる彼のスタイルが、魅力的に感じた。
ライター/井上美羽
大久保農園HP:https://okb.theshop.jp/
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