LIFE

森の国 Valleyの営み
2022.03.13

土を触る

#Agriculture#Eat&Food#自然農法

3月になり、梅の花も満開の季節。森の国でも春のぽかぽか陽気が訪れてきましたね。

今月ももう中旬なのかと時の流れの早さにおののきながらも、季節にあわせてゆるやかに変化してゆく自然に感銘を受ける日々であります。(感慨深い・・・)

昔から米作りがライフワークである目黒の住民は、空を見て、風の変化を感じ、春になると「あぁ、今年も田畑を耕す季節がやってきた」と外に出て、農作業を始めます。

毎日大自然の中で農+土木作業を行っている細羽さんと共に、目黒の田んぼを眺めながら『有機農業』を掘り下げて考えてみました。
森の国では、環境負荷をなるべく減らしながら、人と自然がどのように共生できるのかを模索中なのです。

限界集落における耕作放棄地の増加

耕作放棄地だったこの土地は、家(右)の高さまで草が生えていた。

限界集落と言われている森の国目黒で生活をしていると、耕作放棄地が増加しているという日本の課題が現実世界として見えてきます。

昨年まで米作りをしていた農家さんが今年は農業を引退するという話は珍しくなく、跡継ぎがおらず、耕作放棄地となってしまうのです。

化学肥料や農薬、過剰な開墾耕作が要因となり痩せてしまった土地は、土自体の生命力が衰え「砂漠化」してしまいます。
砂漠化すると、単一の草しか生えず、多様性は失われ、再び農作物を育てるには困難な土壌となってしまうのです。

野菜作りは土づくりから

雑草だって食べられる。土づくりでは「あえて抜かない」。

そもそも、「土の状態」を考えたことはあるでしょうか。そもそも、「土を触ったことがない」という人ももしかしたらいらっしゃるかもしれません。
手で握ってみて、適度な水分と、適度な隙間のある団粒構造の土が、良い土とされ、微生物や菌も多く生きている土です。

土を触り団粒構造を確かめる

砂漠化した土地から農業に適したふかふかの良い土にするためには、食用として栽培する農作物だけではなく、ハーブやマメ科の植物など、多様性を重視しながら育てていくのが良いのだと細羽さんは話してくれました。

3種の田んぼ

冬水田んぼに挑戦中の田んぼ①(下)と蓮華の種を蒔き、合鴨農法に挑戦予定の田んぼ②(上)

昨年、一反の土地を借り、初めての米作りを行った細羽さん。今年はなんと三反に拡大。
さらに、自然栽培米を最も効率よく作るために、それぞれ異なるやり方で米作りを行う実験を行うそうです。
1つ目は、冬季湛水。通常、冬の間は水を張りませんが、このやり方では、稲を刈り終えた田んぼもあえて湛水状態にしておくことで、雑草の発生を防いだり、冬の間の菌や微生物の活動を促したりする効果を期待できます。

2つ目は、合鴨農法。こちらは自然農法の中では知られているやり方かもしれません。水田に鴨の雛を放つことで、彼らに除草の手助けをしてもらおうという手法。
鴨たちが歩き回ることで、小さな雑草を足で掻いて抜いたり、水田内を常に濁らせることで水中に生える雑草の光合成を妨げたりして、雑草の発生を防ぎます。

しかし、画期的だと思われる合鴨農法にもデメリットもあります。
鴨の雛がカラスに襲われてしまうのです。そのため、田んぼの上に網目状の糸を引き、カラスがやってこないようにしなければならず、これもまた一苦労・・・。
こうした一つ一つの労働の重さを考えると、なるべく作業を効率化するために農薬や化学肥料を撒いてしまう農家の気持ちもわかります。

3月に緑の田んぼはここだけ。とても目立つ

まだまだこうした自然農法のやり方は一般的には浸透していないため、小さな集落で行おうとすると理解されないことも多かったり、変に目立って非難されることも珍しくありません。

オーガニック、自然農法が注目を浴びる一方で、農業の現場を目の当たりにして、まだまだ課題は山積みだと感じるのです。

そこで、テクノロジーを掛け合わせることで、こうした募りゆく課題を解決できるのでは?と考えた細羽さんは、3つ目の田んぼに新たなアイディアを投入します。
その名も「ロボ鴨農法」(勝手に命名)
ロボット工学を学ぶ学生と共同で、鴨のロボットを開発。この夏はロボ鴨農法を試みるとのこと。

生きている鴨が動き回るアナログ田んぼの隣に、デジタルの鴨が動き回るデジタル田んぼ・・・。
なんだか不思議な3種の田んぼがこの夏、目黒の田畑に並びます。

ライター/井上美羽