あめつち便りアーカイブ

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2026.10.18

Vol. 22 共同体

Social Regenerator(地域蘇生人)の細羽雅之です。

今年もウチの栗畑には、たくさんの栗が実りました。

この季節は、連日の栗拾いです。

長靴のつま先でイガを剥きながら、キッチントングで一つひとつ栗を拾っていきます。今年は買い物かごで10杯分ほどの栗を収穫しました。

もちろん、ウチだけでは食べきれません。

そこで、集落のご近所さんにお裾分け。

皆さん、とっても喜んでくださいます。

目黒集落では、こうした「お裾分け」が日常の風景です。

気がつくと玄関先に採れたての野菜が置いてあったり、釣り帰りのご近所さんから魚をいただいたり。

誰がくれたのかわからないことさえあります。

見返りを求めるでもなく、余ったものを誰かに届ける。

そんな何気ない営みに、いつも心がほっこりします。

そして、この小さなやり取りの中にこそ、「共同体」の本質があるのではないかと、最近考えるようになりました。

会社という組織、集落という共同体

人口約250人、移住者約40人。

ボクたちが暮らす目黒集落は、小さな一つの共同体です。

では、この共同体と、会社や団体といった「組織」は何が違うのでしょうか。

ボク自身、サン・クレアというホテル運営会社を経営しています。

従業員は約100名。広島を中心にいくつかのホテルを運営しながら、ボク自身はこの森の国Valleyに完全移住して暮らしています。

都市部のホテルでは、社員が長く勤め、組織の中で成長していくことを大切にしています。

一方、森の国Valleyで働く若者たちには、少し違った考え方で向き合っています。

それは、**「いつか、この会社を卒業してほしい」**ということ。

森の国Valleyでは、原則として2〜5年ほどで自立・独立することを見据えて働いてもらっています。

会社で働く間に、自分の強みを見つけ、本当にやりたいことを探し、自分らしい生き方を定めていく。

そして、集落で暮らし続けるための生業と生活の基盤を整え、やがて独立していく。

会社が人を囲い込むのではなく、一人ひとりが自立して生きていくための、いわば「巣立ちの場」でありたいと思っています。

一人ひとりが、自分の生業を持つ

そうして独立し、集落で暮らしている若者たちが、今では何人もいます。

キャンプガイド、農業、カフェ、民泊、猟師、ネイチャーガイド。

さらには、リモートワークで企業のコンサルティングをしたり、YouTuberとして活動したり。

山深い小さな集落でありながら、現代のテクノロジーを活用した新しい生業も生まれています。

面白いのは、誰もが一つの仕事だけで生計を立てているわけではないことです。

カフェ × 猟師 × ガイド。

農業 × 民泊 × リモートワーク。

季節や暮らしに合わせて、いくつもの仕事を組み合わせながら生きています。

そこには、タイムカードもなければ、毎朝決まった時間に出勤する必要もありません。

もちろん、自由である分、自分で仕事をつくり、収入を得ていく責任もあります。

決して楽な生き方ではありません。

それでも、彼らが大切にしているのは、仕事だけに人生を占領されないこと。

子どもと一緒に過ごす時間。

畑に出て、作物の成長を愛でる時間。

ご近所さんと草を刈り、集落の道や水路を守る時間。

自然の移ろいを感じながら、日々の営みを重ねる時間。

仕事のために暮らすのではなく、暮らしを豊かにするために働く。

そんな価値観が、この集落には少しずつ根づいているように感じます。

自立しているからこそ、支え合える

ここで、もう一つ大切なことがあります。

それは、みんながそれぞれに「自立」しているということです。

誰かに過度に依存することなく、自分の仕事を持ち、自分の暮らしを営んでいる。

だからこそ、お互いの生き方を尊重できる。

必要以上に干渉することも、誰かに何かを強制することもありません。

しかし、もし誰かが本当に困ったときには、話が違います。

事故や病気で動けなくなったとき。

一人ではどうにもならないことが起きたとき。

そんなときは、自然と誰かが手を差し伸べ、みんなで支え合う。

普段はそれぞれが自由に生きているのに、いざというときには力を合わせる。

「自立していること」と「支え合うこと」は、決して矛盾しない。

むしろ、一人ひとりが自立しているからこそ、本当の意味で支え合えるのではないでしょうか。

そして何より、

「もしものときには、助けてくれる仲間がいる」

そんな安心感が、この共同体の最大の豊かさなのだと思います。

一つのパンを分け合う仲間

ところで、英語の「Company(カンパニー)」という言葉。

その語源は、ラテン語の「共に」を意味する com と、「パン」を意味する panis に由来するといわれています。

つまり、もともとは「一つのパンを分け合う仲間」という意味合いを持つ言葉なのです。

なんとも素敵な語源ですね。

現代の会社組織は、どうしても売上や利益、効率や生産性を追い求めることが中心になりがちです。

もちろん、会社が存続するためには、利益を生み出すことも大切です。

ボク自身、長年経営に携わってきたからこそ、その重要性はよくわかっています。

でも、会社というものの原点には、もっと人間らしい「分かち合い」があったのではないでしょうか。

一人では生きていけないからこそ、仲間と力を合わせる。

得意なことを持ち寄り、足りないところを補い合う。

そして、得られた恵みを分かち合う。

それは、まさに目黒集落で日々繰り広げられている営みそのものです。

秋の栗をお裾分けすることも、誰かが困ったときに手を差し伸べることも、根っこは同じなのかもしれません。

ボクが森の国Valleyで育んでいきたいのは、そんな共同体です。

一人ひとりが自分らしく、自立して生きている。

それでいて、決して孤立していない。

互いを尊重し、必要なときには支え合い、自然の恵みを分かち合う。

会社でも、家族でも、単なるご近所付き合いでもない、新しい共同体のかたち。

そして、そこから生まれる知恵や価値観が、都市の会社組織や、これからの社会にも何かを問いかけることができたら。

そんな未来を想像すると、ワクワクしてきます。

今年もたくさん実った栗を、ご近所さんと分け合いながら。

この小さな集落で、真の「カンパニー」を育んでいきたいと思います。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

【ご案内】今に、ひらく。森とわたしの発酵リトリート

11月7日(土)〜9日(月)|2泊3日

今回のコラムでお伝えした「共同体」。

実は、自然界の「発酵」にも、どこか通じるものがあるように感じています。

目に見えない微生物たちが、それぞれの働きをしながら、互いに作用し合い、時間をかけて新しい豊かさを生み出していく。

人もまた、そんなふうに生きられるのかもしれません。

この秋、森の国Valleyの「水際のCamp-Us」で、発酵をテーマにした2泊3日のリトリートを開催します。

講師には「麹の学校」を主宰するなかじさんをお迎えし、自分の体温で麹を育てる「ポケット麹」づくりを体験します。

そして、メンターの井上友美さんとともに、森を歩き、身体をゆるめ、暖炉を囲んで語り合う時間。

麹を育てながら、自分自身の心と身体の声にも耳を澄ませてみる。

発酵を「食」だけでなく、「生き方」からも感じていただく3日間です。

秋深まる滑床の森で、皆さんとご一緒できることを楽しみにしています。

開催日: 2026年11月7日(土)〜9日(月)
会場: 水際のCamp-Us(愛媛県松野町目黒)

▼ 詳細・お申し込みはこちら

https://morino-kuni.com/fermentation-retreat2026

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