あめつち便りアーカイブ
Vol. 24 森とパン
Social Regenerator(地域蘇生人)の細羽雅之です。
11月に入り、目黒集落も日に日に寒くなってきました。
朝は10度を下回る日もあり、そろそろ霜が降りそうな気配です。
つい先日までタンクトップで動き回っていたのに、季節は待ってくれません(笑)。
さて、目黒集落には、上目黒(カミメグロ)、下目黒(シモメグロ)、西の川など、いくつかの組があります。
ボクが暮らすのは、その真ん中にある目黒中組(ナカグミ)。
通称「中目黒」、略して「ナカメ」です。
東京のナカメとは、ずいぶん景色が違いますが(笑)。
そのナカメで、ひときわ目を引く黄色い看板。
「森とパン」。
ベーカリーであり、ボクたち家族の住まいでもある場所です。
この看板の文字、実は、小学生が書いてくれたものなんです。

2020年、コロナの真っただ中。
学校でも、いろいろなことを我慢しなければならなかった子どもたちと、何か楽しいことができないだろうか。
そんな思いから、ベーカリーのオープンに先立ち、地元の小学生に看板の文字を書いてもらうことにしました。

「森とパン、という字を書いてください」
お願いすると、たくさんの作品が集まりました。
大人顔負けの達筆な文字。
わんぱくさが、そのまま飛び出してきたような文字。
同じ「森とパン」なのに、一つとして同じものがありません。
どの文字にも、書いた子の顔が浮かんでくるようでした。

ずいぶん悩んだ末に選んだのは、子どもらしい自由さがあって、ボクたちのベーカリーにぴったりだと感じた文字でした。

書いてくれたのは、当時小学5年生だったカイセイくん。
「まさか自分の字が!?」
驚きと嬉しさを隠せない、あの時の表情は、今もよく覚えています。
あれから6年。
カイセイくんも、今頃は高校生になっていることでしょう。
小学生だった彼の文字は、今日も変わらず、集落の真ん中で「森とパン」の顔になっています。
この6年の間に、森の国Valleyには、たくさんの子どもたちが家族と一緒に訪れてくれました。
正確に数えたことはありませんが、本当に多くの出会いがありました。
最初はうつむいて、お父さんやお母さんのそばを離れなかった子が、半日もすると、元気いっぱいに笑っている。
森に入り、川に浸かり、田んぼや畑で虫や生きものに触れる。
そうして過ごすうちに、ふっと目が輝く瞬間があります。
その瞬間を見るたびに、自然ってすごいなあ、と思うのです。
面白いのは、子どもだけではないこと。
そのうち、お父さんまで一緒になって、子どものようにはしゃぎ出します(笑)。
そんなご家族を、何度も見てきました。
大人になると、どうしても先回りして考えるようになります。
役に立つだろうか。
うまくできるだろうか。
時間を無駄にしていないだろうか。
ボク自身、経営者として、そんなことばかり考えていた時期もありました。
でも、森で遊ぶ子どもたちは、目の前の面白いことに夢中です。
触ってみたい。
入ってみたい。
もう一回、やってみたい。
その姿につられて、大人もいつの間にか夢中になっている。
森には、そんなふうに人を童心に帰らせてくれる力があるように感じます。
街で暮らしていると、建物や道路に囲まれ、気がつけばスマートフォンの画面を見て、一日が過ぎていくこともあります。
便利な毎日の中で、土に触れたり、川の冷たさに驚いたりする時間は、案外少ないのかもしれません。
森の国Valleyに来てくださる皆さんも、どこかで、そんな時間を求めているのではないでしょうか。
そして、子どもと一緒に遊んでいたはずが、自分もすっかり楽しんでいたことに気づく。
大人にとっても、嬉しい時間だと思います。
「あめつちの心に近づかむ」。
森の国Valleyで大切にしているこの言葉を、ボクは、そんな場面に重ねます。
川に入って「冷たい!」と声を上げる。
虫を見つけて、思わずしゃがみ込む。
頭で考えるより先に、心と体が動いている。
その時、ボクたちは自然を、ずいぶん近くに感じているのではないでしょうか。
「森とパン」の看板をあらためて眺めると、あの時、この文字を選んでよかったなと思います。
小学生だったカイセイくんが書いてくれた、のびのびとした文字。
6年たった今は、大人のボクのほうが、そこから教わっているのかもしれません。
もう少し、自由に。
もう少し、子どものように。
森に入り、川で遊び、お腹がすいたらパンを食べる。
そんな一日を、皆さんも過ごしにいらしてください。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
秋の森で、感覚をひらく時間をご一緒に。
森で遊び、食卓を囲み、自分の感覚に耳を澄ます。
そんな時間を過ごしていただける、2つの企画をご案内します。
【今週末開催。まだ間に合います】
発酵リトリート2026
今に、ひらく。
森とわたしの発酵リトリート
2026年11月7日(土)〜9日(月)/2泊3日
会場:水際のCamp-Us
立冬の日から、新月へ向かう3日間。
身体をゆるめ、麹をそだて、対話の中で、わたしの感覚を取り戻す。
「麹の学校」のなかじさんと、自分の体温で育てる「ポケット麹」を仕込みます。
香りや手触りを確かめ、ときどき様子をのぞきながら、森を歩いたり、ゆっくりおしゃべりしたり。
麹を育てる時間に、自分自身の心や身体にも目を向けてみる。
忙しい毎日の中で、つい後回しにしてしまう、自分のための時間。
この週末、森の中で過ごしてみませんか。
今からのお申し込みも、まだ間に合います。
――――――――――
【紅葉の季節に、大切な人と】
森の幸、秋の旬。
森・川・海の恵みを、
五感で味わう秋のごちそう。
2026年11月27日(金)〜29日(日)/2泊3日
水際のロッジ ご滞在プラン
11月下旬、滑床渓谷は紅葉の見頃を迎える季節です。
色づいた森を歩き、旬の恵みをいただき、夜は焚き火を囲む。
秋の森には、大人も子どもも夢中になれる時間が待っています。
その日、その場所で出会えた景色や食材、人とのやり取りを楽しむ。
予定を決めすぎない、森の国Valleyならではの「アクシデンタル・ツーリズム(偶発的な旅)」です。
ご家族でも、ご夫婦でも、ご友人同士のグループでも。
ボクたちと一緒に、秋の森を味わい尽くしましょう。
皆さんと森でお会いできるのを、楽しみにしています。
あめつち便りは、代表細羽雅之が森の国Valleyの考え方を、日々の営みを通してお伝えするコラムです。メルマガで定期配信いたしております。
メルマガご登録はこちらから