REPORT

森に息吹をー私たちの手から始まる再生
船越友記郎さんが手掛ける森川海プロジェクトの一環で、2025年2月から植林活動に取り組んでいる森の国Valley。この日は森の国Valleyのスタッフだけでなく、あめつち学舎の学生やインターン生と一緒にフィールドとなる愛媛県鬼北町の山を訪れた。
「向こうの山を見てみよっか。なんで山の木には深緑と黄緑の色があるんだと思う?」という友記郎さんの問いかけから始まったこの日の植林。
「意外と答えは足元の植物が教えてくれるかも」と聞いて、みんなで自分の周りに生えている小さな木々の葉っぱや新芽に目を向ける。
「木には色々な性格があるんよ。ここにいるスギやヒノキみたいに常に葉っぱを持ち続ける日陰が好きな子、あるいは太陽の光が好きな子、周りが何もないところで一番最初に生えたい子、天然林の最終形態の時に生えてくる子。自分に似ている木はどんな木だと思う?みんながもし植物だったらどんな環境に植えてもらえたら成長しやすいかな?」
「足元を見るだけで沢山の情報が溢れてる。今日の植林のテーマは観察やね」
全伐された山を放置することは土砂災害のリスク向上や生態系の乱れ、土壌保全の阻害の原因などにもなると言われている。
「みんなでこの全伐された山にクヌギを植えて、将来クワガタが獲れる森にしよう!」と意気込んだ友記郎さんと高校生たちは、クヌギの苗木を持って林道を上がる。
「よく観察すると苗木にも新芽が出てるでしょ。植林はこの子達の運命を決める作業です。植ったらこの子はずっとここで生きていくんだ。だから植えてあげるときはどこでこの子が生きたいかなって考えて感じながら場所を決めていくといいかもしれんね」
苗木を自分の子どもかのように語る友記郎さんをみて、学舎の高校生たちも責任を感じながら作業に入る。
鍬で深く柔らかく土を掘って梅雨の雨にも夏の台風にも耐えられるようにしっかりと土と周りの枯れ木を被せる。
崖登りのように感じる傾斜のある場所でもたくましく育つよう気持ちを込めて植えていく。
「ここら辺の土ならさっきの場所と色も違って柔らかいかも!」と、土壌の観察も忘れない。

将来、この森はどんな表情を見せるだろう。
この日植えられた小さな苗木たちは、やがて根を張り枝を空へ広げ、命の連鎖を育んでいく。
森を再生させることは、川や海へとつながる命の巡りを整えるだけでなく、私たち自身の感性や自然との関係性を取り戻す営みでもある。
森川海だけでなく、私たちの中にも、静かな息吹が確かに広がっている。
ライター/芝和佳奈