REPORT

NAMECAMP

この夏の記憶を、いま言葉に─ 4人のカウンセラーが語るNAME CAMP 2025

2025.11.01

2025年7月29日から、森の国を舞台に行われた9泊10日のNAME CAMP。
見守ること、ぶつかること、素でいること、そして子ども心を取り戻すこと。

子どもたちと共に過ごした夏は、カウンセラーとして参加した4人にとって「学び」と「気づき」に満ちた時間だった。

「思いどおりにならなかった」「結構きつかった」
そんな言葉が出てくるのは、時間が経った今だからこそ。
キャンプが終わって約3ヶ月が過ぎた今、4人のカウンセラーに、それぞれの言葉でこの夏の自分と向き合ってもらった。

 

「感情のままに、子どもたちと向き合った」─ あめつち学舎・おうすけ

「あの9日間は、とにかく大変だったって印象しかないです」そう振り返るおうすけは、中学生時代にNAME CAMPの参加者として森の国を訪れ、野外キャンプの魅力に引き込まれた。
その後は他団体のキャンプにもカウンセラースタッフとして参加し、いくつもの現場を経験してきた。

「今年の参加者で一番年下だった男の子が、すぐ喧嘩をしたりどこかに逃げだしたりする子で。そういう子と同じ班になったことは他のキャンプでもあったんですけど、9泊っていう長いキャンプでは初めてで。期間の短いキャンプならごまかせた自分の感情とかを、今回はごまかせなかった」

「経験者というのもあって、他のカウンセラーより何かを任されることも多いように感じて。班の中の喧嘩の対応も、自分がやるしかなかった。同じ班のまこっちゃんが経理の仕事で抜ける時間があって、一人で班を見なきゃいけない時間とか。子ども1人がどこかに行っちゃったら、もう他の子が見れないって状況もあって」

思い通りにならない日々だった」とNAME CAMPを振り返るおうすけ。

今回、多くのスタッフが何が起きても極力子どもの言動を見守るというスタンスをとる中で、彼は子どもたちと等身大で向き合っていた。たとえ衝突しても、目をそらさず、感情のままに正面から関わる。その姿勢は時に孤独に感じることもあったという。

腹が立ったらちゃんと子どもにも伝える。素直に向き合ってた

「自分は見守るスタンスにも限度があると思っていて。
例えば、木の枝で殴るとか、そういう怪我や命に関わる行為は止める。でもそのスタンスの違いで、同じ班のカウンセラーだったまこっちゃんとは何回もぶつかりました。この人理解できないって思った瞬間もありました(笑)」

「自分が子どもの喧嘩を止めたことを、他の人が見たら『そこで止めるのが正解なの?』って見えたかもしれない。でも本当は僕だって見守りたかったけど、誰も止めに行かないから自分が止めないとって思って。そのせめぎ合いの中で、ずっと戦ってました

「最後のキャンプファイヤーの前にまた班の中でケンカがあって。
その瞬間にプチッときて、『帰ります』って伝えて、車で寮に戻りました」

「その後、みんなに一度も会えなかったけど、このままじゃ良くないと思って閉会式の前に班の子達に手紙を書いたんです。
書いてる途中で、班の最年少の子が僕に会いたがってるって連絡が来て。
会いに来てもらったら、その子が泣きながら抱きついてきて。
あの瞬間、モヤモヤがちょっと晴れた気がしました」

多くのスタッフが見守るスタンスを貫く中で、おうすけは子どもたちと真正面からぶつかっていく貴重な存在だった。子どもたちの言動をまっすぐ受け止め、感情のままに向き合ってくれる大人はそう多くはない。

子どもが見せた涙の中に、おうすけが真正面から向き合い続けた9日間のすべてがあったのかもしれない。

 

「見守る精神を身につけた」─ 森の国スタッフ(あめつち学舎寮母)・まこっちゃん

 

10日間のNAME CAMPの中で、印象に残っているのはマウンテンバイクの2日目。
50キロを走り切ったあと、達成感に包まれるかと思いきや、そこから班の子どもたちの喧嘩が始まった。

「普通なら『疲れたね』とか『やりきったね!』って空気になるじゃないですか。
でも子どもたちはそうじゃなくて。ただ自分たちのペースで動いていた。
予定調和の達成感とか大人の思惑なんて関係ない。枠をはみ出してくる自由さにむしろ救われたんです」

まこっちゃんは、その瞬間に気づいたという。
「大人はつい、『いい思い出にしてあげたい』とか『きれいにまとめたい』とか考えちゃうけど、そんなの大人の自己満足でしかないんだなって。子どもたちは、自分たちの感じ方でちゃんと世界を見てる。だから、こっちがどうにかしようとするんじゃなく、ただ見て、寄り添っていればいい。その感覚に気づいた瞬間、すごく肩の力が抜けました」

高校生のおうすけと同じ班で過ごした9日間をこう振り返る。
「彼はすごく丁寧に、子どもたちの表情を見て、一瞬一瞬に寄り添うタイプ。
私はどちらかというと、数ヶ月後、あるいは数年後に意味を持つかもしれない体験を信じて見守るタイプ。私にとっては、違うスタンスで子どもに接してくれるおうすけが班にいてくれてとてもありがたかったけれど、おうすけからしたらやりにくかっただろうなと思います」

「高校生の彼には、今の彼にしかできない関わり方がある。彼が信じている正しさや、その気持ちのまっすぐさは、私にはもう真似できないことだと感じて。だから自分のやり方を信じて、それを貫いてみてほしいと思ったんです。その分、あえて彼には言わないこともあったし、それがコミュニケーション不足に感じられているのも理解していました。それでも、自分と相手を信じてやりきる。その選択ができたことが、自分の中では大きかったです

まこっちゃんがこの夏に身につけた、自分の正しさを押しつけるのではなく、相手の感じ方を尊重して見守るというマインド。今では、その見守る心を持ちながら、寮母としてどのような言動をするべきか模索していると語る。

「この夏、見守るという行動をとり続けたことで、その感覚を自分の中に根付かせることができたと思います。でも見守ることだけがいつも最善ではないとも感じています。これからも見守る心は大切にしながら、必要なときには手を差しのべられる寮母でありたいと思っています」

見守るとは、ただ「何もしない」ことではない。相手を信じながら、揺らぎつつも寄り添い続けること。その在り方を探り続ける彼女の姿勢そのものが、誰かの成長を支える力になっていくに違いない。

 

「素でいる勇気をくれた」─ 森の国スタッフ・こっちゃん

 

 

「正直、子どもたちとどう関わればいいか分からなかったんです」
そう語るのは、今年の春に森の国スタッフとして入社したばかりのこっちゃん。カウンセラーとして高校生とともにNAME CAMPに参加した。

「小さい子どもと接するのが苦手で…。お姉さん的な立場になったことがほとんどなかったんです。でもキャンプが始まってからは、お姉さんにならなきゃとは思わずに、自分のままで接していました」

キャンプが始まる前、キャンプディレクターであるまいまいに「子どもが苦手で…」と相談した時に、返ってきた言葉が印象的だったという。

「『え、私もだよ』って言われて(笑)。『素の自分でいいよ』って言ってもらえたんです。『野外教育は子どものためだけじゃなくて、大人のためでもある』ってまいまいさんが教えてくれて。子どもたちに何かをしてあげるだけじゃなくて、自分も一緒に学び合えるっていう視点に変わったら、すごく楽になったんです。キャンプ中も子どもたちの素直な反応やまっすぐな言葉に、私が助けられてました」

「もちろんイラついてしまうこともあって。
つい真顔になっちゃって、『あ、これ良くないな』って思ってたんですけど、子どもたちが『こっちゃん、たまに真顔の時あるよね。ちょっと怖い時ある』って言ってきて(笑)。
『ごめんね』って言ったら、班の女の子が『でもそれって真剣だからでしょ?』って言ってくれて」

「その時、『子どもたちのほうが大人だな』って思いました。
自分が負の感情を出してしまっているのに、『真剣だからそうなるんでしょ』って、そんなふうに捉えてくれるんだって」

キャンプが終わって振り返る今、当時の自分にこう声をかけたいという。
「何も考えなくていい。そのままでいいよって言いたいです。完璧にやろうとしなくていいし、無理にカウンセラーっぽくならなくていい。自分のままでいることがいちばん大事なんだって思いました

「まいまいさんが言っていた『カウンセラーはこうあるべきなんてない』って言葉がずっと支えでした。自分にできないことがあってもいいや。そのままでいいって思えたことが、いちばん大きな学びだったと思います」

飾らない自分でいることを選んだこっちゃん。
この夏、自然体の自分に出会えた彼女は、誰かのために頑張ることだけでなく、自分のまま、この場所で歩いていけることを知ったのだと思う。

 

「子ども心を取り戻すチャンスだった」─ あめつち学舎・かん

「班の中に全然手伝わない子もいたし、めっちゃ毒を吐いてくる子もいて(笑)
『この子らと10日間過ごすのか…』って思うと、けっこうきつかったですね。まあ、覚悟はしてたけど」

キャンプの途中で東京に帰省する予定があったかんくん。再び森の国に戻ってきたとき、班の雰囲気は大きく変わっていた。

「東京から戻ってきたら、班の絆が深まっていて。
何も手伝わない子も、なぜか手伝わないキャラクターが確立していて(笑)
人を変えようとせずにありのまま受け入れる。それが結果的にいちばん大事だったのかも」

同じ班の中でも、カウンセラーとしての関わり方にはそれぞれのスタイルがあった。その違いが、子どもたちの時間を豊かにしていた。

「同じ班のカウンセラーだったこっちゃんは、テキパキ作業してくれたり子どもたちのサポートしたりするのが上手。自分はちょっと大人なキャンパーくらいの立ち位置で、見守るよりも、子ども心を解放して一緒に楽しむことを意識してました。それが自分なりの関わり方だったと思います」

そんな彼の姿勢の背景には、「子ども心を取り戻したい」という思いがあった。

「中学生くらいの頃から、『大人っぽく見られたい』って思っていて。子どもっぽい同い年の子と関わるのも嫌だったんですよね。特に東京とかにいると、どうしても大人びた自分を作っちゃう。いつの間にか自分の中の子ども心を忘れそうな気がして」

あめつち学舎の活動と並行して、音楽の道を志すかんくん。表現者としての自分を模索する中でも、子ども心を置き去りにしていたことに気が付いたという。

「今年挑戦したボーイズグループのオーディションで、尊敬するプロデューサーさんが『何にも染まっていない心を持っている人が、本当に楽しい音楽を届けたり作れたりする』って言っていて。『あ、俺にはその感覚が足りてないな』って思って。だからこのキャンプは、何事も純粋に楽しむ、子ども心を取り戻せるチャンスだって思ったんです」

キャンプ中に見せた彼の子ども心は、きっとこれからもあめつち学舎という学びの場で、そしてアーティストとしての道の上でも、彼自身を支えていくはずだ。

無垢に楽しむ心を持ち続けること。それこそが、彼らしさの原点なのだと思う。

NAME CAMPディレクターまいまいからメッセージ

 

みんながそれぞれの方法で、子どもたちと、そして自分自身と真剣に向き合ってくれた10日間。

感情をまっすぐに出す勇気、見守る覚悟、素のままでいる強さ、子ども心を信じる力。

どの関わり方も、子どもたちにとってかけがえのない愛のかたちであり、その全部がこのキャンプを豊かにしてくれました。

4人の姿が、一日一日、毎日、本当にかっこよかったです。

私自身も、今年のNAME CAMPでは「信頼すること」「見守ること」「支えてもらうこと」を体験させてもらいました。

太陽を背に歩く
そんな言葉の意味を、みんなのおかげで感じることができました。

野外教育の可能性を改めて信じることができたのも、みんなのおかげです。

スタッフ、キャンパーのみんなへ

 

この10日間を乗り越えた「自分」が、いつでもそばにいてくれるよ。
あの時の自分に語りかけると、きっといつでも答えてくれるよ。

「あなたは、あなたのまま、ありのままで、すばらしい!!自信持ってね!!」

この10日間が、必要な時にみんなを支える「お守り」になりますように。
心から、ありがとう。