LIFE

森の国 Valleyの営み
2021.11.25

アマゴの卵はなんと言う?

#Eat&Food#滑床渓谷#養魚場

アマゴという魚をご存知だろうか。
見た目はヤマメにも似ており、主に西日本の瀬戸内海側にかけて生息するサケ科の川魚だ。

滑床渓谷に向かう山道の途中に「アマゴの釣りぼり」がある。
ここでは、アマゴやニジマス、アユの養殖を行なっており、釣りぼり体験ができる施設となっている。

ここでアマゴやニジマスの採卵から孵化、餌付け、育成まで1年を通して一人で行っている方がいる。竹内さんだ。

養殖場の管理人の竹内義富さん。毎日餌やりや池の掃除など作業をする。

彼の1日のスタートは夏は朝7時から始まる。魚の餌付けをし、その後池の掃除を行う。
落ち葉が水路の入り口に溜まったり、餌の食べ残しや糞が排水に残ると山の水源から流れる水が滞ってしまうため、日々の掃除は欠かせない。

日々の作業に加えて、年間を通した作業は、季節ごとによって違う。
毎年10月下旬頃になると、採卵・受精を行う。メスのお腹を切開し、出てきた卵(採卵)にオスの腹を搾るように押して精子をかけ(採精)、受精させるのだという。

いくらのような見た目のあまごの卵。市場に出回ることは少ないが、
うまく処理して醤油漬けにすると味はいくらと変わらない美味しさ!

生命を宿す瞬間が竹内さんの腕にかかっている。なんとも尊い作業なのだろうか・・・。

その後20日ほど経った後に行うのが『検卵』という作業だ。この日は11月上旬で少し早かったが、検卵作業をお手伝いした。

白く濁った卵(死卵)を放置すると水カビが寄生し他の正常な卵に寄生するなど悪影響を与えてしまうため、「卵挟み」で死卵を一つひとつ摘まみ取るのだ。

卵の数はおよそ10万個。白い卵だけを取り除き、落としてあげる。かなり根気のいる作業だ。

特に、雨は卵にとっては死活問題。
「大雨が降ったら網にヘドロがついて水の行き来が悪なるんよ」
そうすると死卵は増える。

「ただ、卵はあんまりすぐに動かさん方がええ。動かすと良い卵も白くなって死んじゃうんよ。真ん中が黒なってきて、発眼したら動かしていいんよ。」

天候とタイミング、そして人の手に命が左右される、非常に繊細な現場だ。

メスのお腹を切り、卵を取り出す竹内さん。慣れた手つきだ。

卵が孵化するのは12月中旬頃。稚魚はまず室内の水槽で飼う。
「最初泳ぎ出した頃はピンク色してて、そのうち黒っぽくなってくるんよ。そして動き出したら別の水槽に移して、餌付けして。
餌付けはだいたい1月くらいから始まるんよ。」

大雨や台風の日には、養魚場に泊まり込みで管理をするのだという。
落ち葉や木の枝、石が詰まり、水の流れが滞ってしまうため、それを除けなければならないのだ。

こうしてさまざまな天候や気候に耐え凌いできた魚たちが成熟し、出荷されるまで約2年ほどかかる。

竹内さんのお話を聞き、作業をお手伝いしながら、いつも口にしている魚の命の尊さを実感する取材となった。

(ちなみに、あまごの卵のことを、なんというのだろうか?)
ライター/井上美羽