AMBITION

森の国 Valleyの挑戦
2021.05.17

滑床渓谷ネイチャーツアー【新緑の季節編】

滑床渓谷には江戸時代から人が住んでいたり、交易の場として商人たちが行き来していたという。そのため、現在は遊歩道となっている道は当時から整備されており、大自然と人間が永きに渡り共存していた。

滑床渓谷の歴史

滑床渓谷は、愛媛県宇和島市から北宇和郡松野町にまたがる渓谷で、足摺宇和海国立公園に指定されている。四万十川源流の目黒川最上流12kmに及ぶ、大渓谷。
ここから宇和島まで行くためには山をぐるっと一周する必要があるため、車で約1時間ほどかかるのだが、実は山を越えるとすぐに宇和島市にいけてしまう。

『森の国発祥の碑』初代松野町長 岡田倉太郎
「この森にあそび、この森に学びて、あめつちの心に近づかむ」

この滑床渓谷の大自然が残っているのは初代松野町長の岡田倉太郎氏のおかげである。当時は林業が盛んであった高度経済成長期であったが、彼は滑床渓谷の自然を残すために、この地を誰もが憩えるレクリエーションの森として保存することに尽力したのだ。

そんな滑床渓谷の歴史を勉強した上で、早速ネイチャーツアーをスタート。今回ガイドしてくれるのは、水際のロッジアクティビティマネージャーの治彦さん
5月は新緑の季節。雨上がりの潤いたっぷりな森の様子を覗いてみよう。

自生する森の植物たち

この森には何千年、何万年の歳月をかけて生きてきた、多種多様な植物たちが自生している。
森の植物をゆっくりと観察しながら歩いていると、また奥深い森の世界が見えてくる。

『モミの木の新緑』

もみの木は、硬くてゴワゴワしているイメージ。
しかし新緑のこの季節は触るとふわふわしている。

『ヤマモミジ』
『イロハモミジ』

モミジとカエデの種類がすごく多いのも、滑床渓谷の特徴だ。
それぞれ種の形や大きさも全然違う。
ここでよく見かけるのはヤマモミジとイロハモミジ。
ヤマモミジはタネがVやUの形をしている。
イロハモミジは葉っぱの数が7枚、タネが平たくまっすぐしている。
ただ、混合したりハイブリットなモミジもあるため、区別するのはなかなか難しい・・・。

地面をよく見てみると、小さなモミジが顔を出している。
ここから大きく成長し木になるのはごく一部。

新緑の季節に珍しい赤い葉。
ノムラモミジという名称は葉の色、濃紫(ノウムラサキ)からきている。
秋の紅葉のメカニズムとは違って、葉が日光に弱いため赤く染まる。
葉がサングラスをかけているような感じだという。
裏側から光を照らすと、葉の内側の緑色が見える。

『山椒』

水際のロッジ周辺にもたくさん生えている山椒の木。
猿が食べた糞を媒介にして増殖することもある。
花も葉っぱも種も食べられる。
5月のこの時期の山椒は辛味より香りの方が強い。

『苔』

滑床渓谷の自然の多様性を保つために一役を買っているのがこの苔。
晴れている日はきゅっと一本の細い葉になっているが、雨の日は開いていて綺麗。なぜ苔類は地球上でずっと生きられたのかというと「まずいから」だそう。苔は胞子で育ったり、枝を伸ばしてクローンを作ったりすることもできる。

『マムシグサ』

茎の模様と色がマムシに似ていることからマムシグサと呼ばれる。

『ホクロウイチゴ』

繁殖力が強く、水際のロッジの周りにたくさん自生する植物。
実をつけ、猿たちが食べに来る。

倒木した木の上に新たな命が吹き込む。
古い木が倒れるとその木が養分となり新たな命に栄養を与える。

滑床たる所以『岩』

そして滑床渓谷の最大の特徴であり、滑床たる所以ともいえるのが『岩』だ。
滑床の岩は花崗岩といい、火山が噴火し、マグマが冷えて固まった岩。

一枚岩なのでつるつる。
雨が降ったらこの岩を通っていき、土に染み込まないので
雨が降っても水が綺麗で透き通っている。

岩の周りにも苔と木が絡みつき生命を宿している。

長い月日をかけて水が岩を削り、少しずつ形をかえてきた。

『鳥居岩』

最近は刀を持ってこの岩の前で写真を撮る子供たち(竈門炭治郎風・・・?)も多くいるそうで。笑

森の植物や岩をよく見ながら滑床渓谷を散策してみるとまた森の新しい表情が見えてくるのではないだろうか。

奥深い森の世界。ネイチャーツアーはまだまだ続く。

ライター/井上美羽