AMBITION

森の国 Valleyの挑戦
2024.09.04
NAMECAMP

NAME CAMP Jr. 2024 「自然とともだちになる」

#NAMECAMP#滑床渓谷

小学1年生〜3年生を対象に開催するNAMECAMP Jr.は、3泊4日の野外でのサマーキャンプ。舞台は愛媛県松野町滑床渓谷の森の中だ。

「みんな、自然と聞いて、何を思い浮かべる?」

開会式で、そう問いかけられたNAMECAMP Jr.キャンパーたちは、「うみー!やまー!かわー!いきものー!」とありったけの声で元気よく叫ぶ。

「そうだね。ここには自然がいっぱいあります。今回の4日間で、みんなには、自然と一体化・・・うーん、自然と “ともだち” になってほしいんだ」

キャンプディレクターのまいまいから提示されたお題に対して、疑問が浮かんだ子、疑問すら浮かばなかった子、キャンパーたちはそれぞれ違う表情を浮かべていた。

4日後、彼らにはどんな変化があるのだろうか。今回のNAMECAMPJr.は、NAME CAMP 2024の序盤でマムシに噛まれ、キャンプからの離脱を余儀なくされたキャンプディレクターのまいまい(NAME CAMP2024の様子はこちら)に代わり、スタッフとして参加した狩猟家の坪井映二郎さん(えいちゃん)と、森川海のナビゲーターである船越友記郎さん(ゆきおさん)がリードした。

水と “ともだち” になる

NAME CAMP Jr. 2024は、常に川の音が聞こえるような、滑床渓谷の水際が舞台だ。水は、虫、森、動物、人間すべての生態系にとっての恵みである一方で、生死をも脅かす恐ろしい存在でもある。

勢いよく流れ続ける渓谷の川を目の前に、何人かのキャンパーは水を恐れ、川に飛び込むことをためらっていた。

しかし周りのキャンパーたちは楽しそうに水と戯れている。その様子を横目に、自身の中から湧き出てくる興味に負け、ついには水に飛び込んでしまう。

一瞬溺れかけて恐怖の表情を見せるが、他のキャンパーたちと手を取り合いながら川を超え、水を克服したあとには、みんな、誇らしい表情を浮かべていた。

水との距離を計りながら、その距離を縮め、克服し、一体化していく。

これが、水と “ともだち” になることなのかもしれない。

いきものをいただく

森川海のナビゲーター、ゆきおさん​は、3日目の夕方、森の中でマムシを発見し、捕獲した。そのマムシの皮を剥ぎ、捌く様子をみつめるキャンパーたち。

森を愛でる精神を持つゆきおさんは、植物や虫、動物の目線で森と接する自然な姿をキャンパーたちに見せながら、生き物を殺めるということはどういうことなのかを、語り始めた。

「生き物を殺めるって、すごくストレスがかかるんだ。そのストレスはあまりにも重くて、自分の中で消化するのが難しくて。だから、ごめんね、ありがとうね、感謝して頂きます、と命を自分の体にして一生懸命生きる事で初めて消化できるんだと思う」

「このマムシは、お母さんだったんだ。子を宿した命を頂いたから、赤ちゃんも、内臓も、調理して頂こう。ごめんね、ありがとう、頂きますで、みんなでお祈りしよう」

彼の言葉をキャンパーたちはどのように受け取ったのかはわからない。ただ、そのあとには最初は解体をためらっていたキャンパーたちも、美味しいと喜び、パクパクと骨まで食べていた。ゆきおさんはこの一連の出来事を、こう振り返る。

「胎内の子どもも殺めて、食べる、という衝撃的なできごとを体験しました。命を捌く時の生々しい匂い、大人もこどもも言葉にならない感情をもったと思います。でも、頂いた命を無駄にしないために、ちゃんと食べようと、みんなで食べました」

こどもの感性は無限大

えいちゃんは、今回は極力大人の手を加えないことを意識していたという。「学ぶべきタイミングがそれぞれのこどもによって違うから、僕ら大人はその環境を与えるだけでいい。こどもの感性を大人の価値観で邪魔しないようにしていました」と話す。

狩猟家 えいちゃん(左)

「ある日の朝、あるキャンパー2人が喧嘩をし始めました。最初は口喧嘩だったのですが、それがだんだんエスカレートして、大きな木の棒を持って追いかけ回し始めたんです。でも、絶対に介入しないぞという強い意志を持って見守っていました。そうすると、キャンパーたちはどこまでやっていいかを理解しているようで、相手を傷つけないようにしながら、一線を超えない理性は持ち合わせていたんです。見守るって意外と難しくて、僕自身内心はビクビクしていたのですが、彼らはそんな大人の懸念も気に留めることもなく、いつの間にか勝手に仲直りしていました」

彼らは感じるままに喧嘩して、動いて、遊んでいる。だからこそ、「危ない」「やめなさい」という言葉で彼らの可能性や感性を制限せず、こどもを100%信じてあげることも必要なのかもしれない。なるべく大人の手を加えない。その先に見えるキャンパーたちの表情はあまりにも自然に馴染んでいたようにも思う。

「キャンパーごとにそれぞれ変化する瞬間がありました。エビをさわるのをいやがっていた子が触るようになったり、苔を食べ始めるようになったり。こどもの変化の幅は無限大だと感じました」とゆきおさんも話す。

「まいまいがNAME CAMPでマムシに噛まれてから始まった、この夏の自然との戦い。うなぎ、マムシ、オニヤンマなどの自然がもたらしてくれるギフトの力も大切な授かり物でした。キャンプ最終日にマムシが現れてくれて、それを食べて締めくくる。どんなにプログラムを作り込んでもなし得ない、天の演出でした」

私たちも、自然と本気で向き合うからこそ、自然に試され、ときには自然と生死をかけて戦うこともある。でも、戦いの後にはきっと、そんな自然とも、仲直りをしているのだろう。

森川海のナビゲーター ゆきおさん(右)

ライター・撮影 / 井上美羽