REPORT

蛍の季節に目黒はひとつの家族になる
#Event
愛媛県松野町目黒地区。森の国Valleyが位置するこの小さな集落では、毎年初夏になると目黒川の水辺に蛍が舞い始める。
幻想的な光が飛び交う畦道を舞台に、今年も「蛍の畦道ライトアップイベント(通称:蛍祭り)」が開催された。18回目を迎えた今回のイベントは、あいにくの強風の中での開催となったが、多くの人が目黒を訪れ自然と人が織りなす風景に魅了された。
※蛍祭りの開催に至った背景などはこちらから
会場をつくるのはこの土地に暮らす人たち
人口およそ270人の目黒地区。イベントの実現には、地域に暮らす人々の力が欠かせない。会場となった旧松野南小学校では、草刈りやテントの設営、机や椅子の運び出しといった準備作業が毎年恒例となっている。
数日に分けて行われるこれらの作業には、地区の役員や「目黒の里ホタル愛好会」、若者団体「アイブラック」はもちろん、移住してきた若者たちや、森の国Valleyで学ぶ「あめつち学舎」の高校生たちも加わり、多世代の住民が力を合わせて取り組んだ。さらに、イベント初期から関わってきた東京大学や愛媛大学の学生たちも、当日の準備に加わる。
声をかけ合えば誰かが動き、年齢や立場に関係なく自然と役割が分担されていく。そんな光景が自然に広がっていく。目黒の地域力の高さには、関東から移住してきた筆者としても毎回驚かされる。
伝統の夏祭りや秋に開催される球技大会などの行事も、目黒に暮らす人たちが自分ごととして関わり、つくりあげてきた。
言葉にするのは難しいこの目黒の一体感こそが、都市ではなかなか出会えない隠れた魅力なのだと、今年の蛍祭りにおいても痛感させられた。
地元の恵みが並ぶこだわりの出店
蛍祭りの楽しみのひとつである出店も、地域色豊か。
例年どおり、アイブラックやほたる愛好会がうどんやハンバーグ、かき氷などを提供。今年は、あめつち学舎の高校生・おうすけが、目黒産のいちごを使ったスムージーやいちごミルク、いちごアイスの出店に挑戦。来場者の注目を集めていた。

また、滑床渓谷に佇むレストラン「Selvaggio(セルバッジオ)」も出店。自社農園で自然栽培した野菜とハーブを使ったピタパンサンドは、手軽で美味しい蛍祭り特別メニューだ。
移住してきた若者や家族によるコーヒースタンドや滑床の養魚場で育ったニジマスの唐揚げなども並び、子どもたちの笑い声と美味しい匂いが交差する。

なかでも今回の蛍祭りで印象的だったのは、出店の半数近くが地元で育まれた食材を活かしていたことだ。お米、野菜、果物、魚など、目黒の自然の恵みを地域の人々が調理し、来場者に直接届ける光景は、小さな集落の地産地消そのものだ。単なるお祭りの出店を超え、この土地の暮らしや営みを伝える表現の場になっているように感じた。
270人の集落に息づく地域力
来場者や地域住民が一緒に蛍の光を眺める畦道の光景。人口270人のこの集落で、18年間もイベントを続けてこられたのは、目黒地区の底力にほかならない。行事があるたびに人が集まり、出身地や年代、役割を超えて動き出す。そんな当たり前のようで奇跡のような風土が目黒地区には今も息づいている。

子どもたちが走り回り、大人たちは井戸端会議のように近況や思い出を語り合う。そして自然の恵みを生かした食を囲みながら、目黒地区で生きることの豊かさを分かち合う。


この日の会場はまるで、ひとつの大きな家族のように見えた。
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