LIFE

森の国 Valleyの営み
2021.12.02

滑床渓谷の清流水でつくるナメ米づくりvol.1【水と土】

#Agriculture#米作り#自然農法

2021年春、初めての米作りに挑戦することになった細羽雅之さんと伸枝さん。
家族移住後、目黒の米農家さんから、「ここの田んぼやらない?」と声をかけてもらったことが最初のきっかけだったという。

この背景にあるのは、目黒地域の高齢化だった。
地方の高齢化は全国的にも深刻な問題となっており、農業就業者の7割を占める60歳以上の世代が⾼齢化等によりリタイアし、農業技術の適切な継承ができずに耕作放棄地が増えているのが現状だ。
森の国目黒も例外ではなく、耕作放棄地が徐々に増えている。

「最初は地元の農作業のお手伝いから始めようと思っていたけれど、自分が任されるとなると、責任感も持ってできる。だから、やるなら思い切ってやろうと」
という細羽さんの決断をきっかけに始まった「米づくり」を、半年間追った記録を紹介していく。

水から始まる米作り

米作りはおろか、農業も完全初心者だという細羽さん。地元の農家さんに0から教わりながら始まった。
(入水作業についてはこちら▷ https://morino-kuni.com/life/1881/

「最初は何をやろうとしているのかさっぱりわからずに。とにかく言われるがままやっていたけど、滑床渓谷の川からパイプを繋げて水を通したこともいい経験で、あれがなければ水がどこからくるのか、どこで繋がっているのかも知らなかった」と当時の作業を振り返る。

四万十川上流、滑床渓谷目黒川の水。透き通っていてそのまま飲んでも美味しい!

米作りにおいて「水」は非常に重要な要素の一つ。
森の国目黒では、滑床渓谷から流れる上流水をそのまま利用しているため、森のミネラルをたっぷり含んだお米ができる。

目黒地域ではこのお水からできたお米の美味しさが自慢なのだ。

土壌改善と代掻き

そして、水と同じくらい大事な要素が、土だ。
土壌には窒素・リン酸・カリの濃度バランスが重要で、その土地の土の栄養バランスを見て肥料を与えるのが一般的なんだそう。
「無農薬・無化成肥料でやりたい・・・」という細羽さんの思いもありつつ、今年は最初の元肥だけ肥料を加えることに。
(来年は完全無化成肥料でやる!と意気込む)
肥料を入れたタイミングは、水を溜め、苗を植える前。

今回使用した化成肥料。数字は窒素・リン酸・カリの配合バランスを表す。

環境や健康安全面を考えると、やはりなるべく化学肥料は使いたくないもの。
しかし、最初から否定をするよりも、一度使ってみて知ることも大事だろう。

そして、苗を植える前に行う重要な作業が「代掻き」だ。
代掻きとは、土を水平にならす作業だが、その目的は、藁や雑草をすき込むことで雑草の発芽を抑えたり、有害ガスを抜き有機物 を熟成させたり、土の表面を均一にし苗を植え付けやすくしたりなど、さまざまな目的がある。

そして、代掻き次第で雑草は減りもすれば増えもする可能性を十二分に含んでいる重要な作業でもある。

一番のポイントは、ここで、土が水から出ていないフラットな状態にすることだという。

稲は、水を張っても稲の葉が空中に触れているため成長するが、水中にある草は呼吸ができないため、基本的には生えない。本来は水田にすることでほとんどの草の発生は抑制させることができる。
それでも生命力の強いコナギやヒエなどは発生し、それらが今米農家が戦っている雑草たちだ。

「水面の中に入っていても伸びてくる草はいて、水面と地表面を限りなく近づけると、どっちも出てこない。だからこそ土の表面を作ることは重要で、つまり代掻きは大事な工程なんだ」

こうして水の調達、土壌作り、代掻きを経てやっと田植え作業に入る。
(田植えの記事はこちら▶︎ https://morino-kuni.com/life/2134/

水管理と稲と草の関係性

田植え後、30日〜40日後には一度水を抜く「間断灌水(中干し)」が行われる。

間断完遂とは、水を入れたり抜いたりを繰り返す行為だが、水を抜いて飢餓状態にすると、地面の中で根を伸ばしながら水を探すため、根が張り、稲がより強くなるのだそう。

その後種子から出た茎の根元から新しい茎が出てくる「分げつ期」に入る。1本の苗の茎が5〜6本に分かれていくのだそう。
長い穂には籾がたくさんでき、茎が太く分げつが多いと、お米がたくさん穫れることになる。

「でも、多ければ良いわけでもなくて。一本あたりの米粒が小さくなってしまうので、増えすぎても良くない」

苗の成長をコントロールしながら見極めが必要になってくるのだ。

2021.7.20 中干し(田植え後、35-40日) 雑草も元気に・・・

除草剤を使わないと、これだけ雑草が生えてしまう。
それでも彼らが自然農法にこだわるのには、理由があった。

【草と稲】編に続く・・・

ライター/井上美羽